閑・感・観~寄稿コーナー~
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大道寺峰子のマレーシアだより(7)イスラム文化

2026.04.24

閑・感・観~寄稿コーナー~

 今年(2026年)の2~3月はマレーシアでは忙しい期間でした。中華系の旧正月に続き、イスラム教のラマダン(断食月)が始まり、ハリラヤ(断食月明け大祭)となり、4月に入りようやくお祝いムードがひと段落した感じです。

 ラマダンというと、禁欲的な大変なものと思われがちですが、楽しみにしているムスリムの人の方が多い気がします。神(アラー)を意識し近づくという宗教的な喜びに加え、日没後の食事(イフタール)を楽しむ、食のイベント的な側面があるからです。

 改めてラマダンとは、日中は食事をとることはできませんが、太陽が沈んでいる間は食事可能です。暑い国で日中、水分すらとれない。特に女性は頭部を覆うヒジャブを被った状態なので、体的に本当に大丈夫なのか心配になります。また普段から1日5回のお祈りが習慣化されていますが、この時期は特に丁寧に時間をかけてお祈りが行われます。

 また、期間限定市場「ラマダン・バザール」として、多くの屋台が並び、この時期ならではの食べ物が売られたりします。イフタール用なので、夜店かと思いきや、イフタールとなる午後8時ごろには店は閉まってしまいます。本来はお祈りに時間をかけたり、親しい人たちとゆっくりイフタールを楽しんだりするために、料理を外で調達するという意味があるようです。日本人はお祭りの屋台感覚で買ってその場で食べがちですが、断食している人たちが多い状況では控えるのがマナーとされています。

ラマダンマーケットで買った伝統的な食べ物
ラマダンに欠かせない「クトゥパ」の食べ物用に、ヤシの葉を編むマーケットの店主。中にお米を入れて炊く。この時期、クトゥパを模した飾りが町中に飾られる

 都市部のホテルなどではイフタール用に「ラマダン・ビュッフェ」を提供する店も多く、仕事仲間と行くなど、日本の忘年会のようにイベント化されています。

 そしてラマダン月が明けハリラヤになると、実家への帰省や、親戚や知人と互いの家を行き来し合う「オープンハウス」が行われます。家族ごとに色合わせをして服を新調するなど、一大イベントです。

都心部では少なくなった高床式の伝統式家屋で行われたオープンハウスに、バジュクルンという伝統衣装を着て参加した筆者

 イスラムの象徴は月ですが、まさに夜が長い社会という印象があります。ムスリムの人と夕食をともにする時は、普段でも日没後のお祈りの関係で、夜8時前後からスタートということが少なくありません。なので、さまざまなお店が比較的夜遅くまで開いています。暑い国なので理にかなっているといえるのでしょう。

 住み始めて5年、断食もどきをやった年もあり(それほど苦でなかった)、ようやくイスラム文化がわかりかけてきた気もしますが、私が見ているのはあくまでマレーシアのイスラムであってイスラムを一言で語るのは難しいとも感じます。

 例えば、サウジアラビアなどでは宴会的なイベントは男女全く別室で行われると聞きますが、マレーシアでは男女一緒のことがほとんどです。学校の授業も共学ですし、女性の社会進出も積極的です。イスラムというと女性差別的ととらえられがちですが、マレーシアではあまり感じません。

 そもそも日本ではイスラムというと中東というイメージですが、世界でイスラム人口が最も多い国はインドネシアです。またマレーシアを含めたアジアのムスリムが世界のムスリムの約6割を占めています。イスラム教は現在、世界人口の25%程度で、キリスト教の30%に次ぐ割合ですが、今世紀中にその割合は逆転する見込みです。イスラム文化を理解することがより重要になってくるのでしょう。そういう意味では、マレーシアがイスラム文化への入り口になったのは、とても良かったと個人的には感じています。

                    (元広告局、大道寺峰子)