閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

島で暮らす(11=最終回)送別会で奥さんの目と合い感極まる(元田 禎)

2020.11.03

閑・感・観~寄稿コーナー~

 「島で暮らし、その体験をつらつらと綴りたい」。毎日新聞社を2019年9月に早期退職し、再就職をぼんやりと考えていたとき、僕はふと、突拍子もないことを思いついたのです。
 転勤が多かったので、西日本のあちこちに友達が居ます。片っ端から連絡を取る。そして、色好い返事が早速あって、11月から広島県福山市内海町のマルコ水産(兼田敏信社長)で働き始めたのです。 マルコ水産は海苔養殖をメインにし、カキ養殖や定置網漁も手掛けている会社です。僕のキャリアを面白がってくれたのでしょうか、漁師経験ゼロ、しかも58歳の僕を快く受け入れてくれた兼田社長、ご家族の皆さんには「感謝」の言葉しか見つかりません。
 1年契約を少し短縮し、10月いっぱいで退社。最終日の31日、マルコファミリーと従業員の皆さんに囲まれ、内海町のレストランで僕の送別会が盛大に行われました。 体験は、毎日新聞広島備後面で計15回、フェイスブックで150回書き、このコーナーにも投稿させていただきました。
 マルコで過ごした日々の思い出は尽きません。お礼の挨拶で、僕は皆さんとの出会い、仕事のこと、もう様々な思い出を紹介したかったのですけれど、奥さんの緑さんと目が合ったとき、感極まってしまい涙が出そうだったので、予定より早く切り上げました。
 2019年11月15日から働き、月末に緑さんから現金入りの給料袋をいただきました。親の世代では当たり前だった現金支給ですが、それはもう半世紀前のこと。初めての経験に少し驚き、でも、とっても嬉しかった。その光景が、走馬灯のように脳裏をよぎったのです。
 田島を離れ、11からは大阪港の物流会社で働きます。月一度発行の社内報を作るのが僕の役割で、海との関係は今後も続きます。
                            (元広島支局・元田 禎)
送別会で挨拶をする僕

いつも僕を温かく見守ってくれた兼田敏信社長と奥さんの緑さん

マルコ水産は、年中食べられるカキを養殖している
マルコ水産は、年中食べられるカキを養殖している