閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

神戸の大学で広報を担当しています(高村 洋一)

2020.06.04

閑・感・観~寄稿コーナー~

 毎日新聞社を選択定年退職して、神戸学院大学広報部の嘱託職員になって8カ月がたちました。キャンパスは神戸・ポートアイランドの海辺にあり、開放的な雰囲気です。大津の自宅から通うとちょっと遠いので三宮にワンルームの部屋を借りて、通勤しています。あたりまえですが、新聞社と大学は文化が違い、まだ戸惑いの連続ですが、郷に入っては郷に従うしかありません。

 仕事は主として、大学行事と学生や教員の活躍、表彰を取材してホームページやSNSに記事を書くことです。メディアにリリースを流して取材の要請をすることもあります。最近では大学が「地域と繫がる大学 震災から何を学んだか」を中公新書ラクレから出版しましたので、本を持参して新聞社を回りました。「新聞記者はつぶしが利かない」とよく言われますが、私の仕事に関してはそんなことはありません。記事を書いたり写真を撮影したりする作業は記者時代の延長線上にあります。「やりがい」は格段に落ちたとは言え、私は恵まれています。一方、経験のない人には相当ハードルの高い作業のようです。

 これまで、スポーツのイベント取材で仙台と北海道・釧路に出張しました。10月下旬の仙台は、女子駅伝競走部が全日本大学女子駅伝対校競走大会に出るので、前日から下見を兼ねて出かけました(本当は他社の仙台総局にいる大学の同級生と夜に合流するためでしたが)。同窓会などの沿道での応援ぶりも記事にしてほしいとの要請でした。撮影のため、電車を乗り継いで移動しましたが、土地勘がないので移動に手間取り、何度かシャッターチャンスを逃しました。しかし、同窓会の人から上手な写真を入手して事なきを得ました。

 大学の名札を着けたまま地下鉄に乗っていたら、「神戸学院大学の方ですか。娘が吹奏楽部の部長で、応援演奏するので来ました。先日は吹奏楽部の記事を書いていただき、ありがとうございました」と学生のお母さんから声を掛けられました。保護者会や同窓会がかなりしっかりした大学のようです。

 正月休み明けには、釧路に2泊3日で出かけ、全日本学生選手権(インカレ)フィギュアスケート競技に出場した経営学部の坂本花織さん(当時は1年)を取材しました。アイススケートの写真撮影がこんなに難しいとは知りませんでした。スケートリンクは寒くて風邪をひき、かなり長時間の作業でした。それでも昼間は魚市場などを見に行ったりして、息抜きしました。坂本さんはショートでトップだったのにフリーで逆転されて総合2位でしたが、さすがは平昌冬季五輪に出場したトップアスリート。フリーで4回転フリップをはじめ何度もジャンプに失敗してコーチから大目玉を食らっていたのに、「4回転は試しに跳んだだけで」と余裕を見せていました。

 取材対応もしっかりしていて、カメラを向けると演技直後でも必ず笑顔を作ってくれます。ホームページなどに掲載した写真と記事が気に入ったのか、課外活動団体を表彰する学内の式典で私と目が合うと遠くから駆け寄り、「この前はお世話になりました」と、にっこり笑ってくれました。シーズンは海外遠征が多いので講義を受けるのもたいへんそうですが、極めて真面目な学生です。

 限られた取材とは言え、学生から話を聞くと気分が若返ります。学食で見知らぬ学生が「どこの部署ですか」と、話しかけてきて自己紹介を始めることもあります。同僚の若い職員は丁寧にパソコン操作を教えてくれます。「三谷さんにお世話になりました」と口にする職員も多く、以前私と同じ業務をされていた先輩の故三谷佳弘さん(奈良支局で三谷さんがデスク、私がサブデスクでした)の存在の大きさを感じます。

 近況と言えば、実は5月初めに小学生の甥と遊んでいて足首をひねり、骨にひびが入って歩行が困難な日々が続きました、幸いにして、新型コロナ対策で大学が閉鎖され、課外活動も禁止になった期間と重なり、仕事にはあまり影響しませんでした。

 どちらかと言えば縁の薄かった神戸ですが、港の風情が好きで怪我をする前は週末ランニングを楽しんでいました。幸い毎友会の先輩方も多くお住まいで、時々声をかけていただくので「毎日ロス」を感じることもありません。「神戸っ子」を名乗るにはまだ修業が足りませんが、今後ともよろしくお願いします。

(元福山支局・高村 洋一)

 

神戸学院大学ポートアイランド第2キャンパスで