閑・感・観~寄稿コーナー~
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中国の書家の書(向井 市郎)

2020.04.26

閑・感・観~寄稿コーナー~

  (2019年秋季総会の際のはがきの近況報告欄に「中国の書家の書風で後漢(乙瑛碑、礼器碑)北魏(鄭道昭)唐(欧陽詢、虞世南、褚遂良)等の復習を行っています」と書いてあったので、寄稿をお願いしました)

◆後漢◆

・紀元前200年ごろ文字の統一が始まったのは、秦の始皇帝の時代です。今、実印や書作品等に使う印に残っている「篆書」は、この時に作られたものです。

・隷書体の乙瑛碑は後漢の紀元(153)の立碑で、現在も山東省曲阜市の孔子廟内東廡孔廊碑に列置されているという。原石は碑により異なるが、大体高さ160cm×幅75cmで、全文で7000字程度あるという。他に史晨前碑、西猍頌、曹全碑ならびに張遷碑などがある。これらの字体は八分隷の一典型として重んぜられている。

◆東晋◆

・王羲之(オウギシ)3世紀の手紙として十七帖は草書体の基本でもあります。

・蘭亭叙(353)は書道史上屈指の劇跡であったようで、十七帖と双璧をなすものです。

・集字聖教序(672)は懐仁(エニシ)=お坊さん=が王羲之の行書を集字したもの。集字といえ蘭亭叙と違って王羲之の本物ですから、この字は行書の原典であるといえよう。

◆北魏◆

・龍門 4世紀 鋭角的な三角線。右肩上がりの強い構成を上碑(方筆)という。

・鄭羲下碑(テイギカヒ)(516) 河南省の人で、北朝にあって龍門様式と相対する丸いものを円筆といい、転折部でやや柔らかい筆遣いをすると特徴が出る。

・墓誌銘 書体は隷書または楷書で、唐代に入ると行書も現れる。楷書は大体3世紀に現れ、4~6世紀にいろんな展開をみせた。

◆唐◆

・九成宮醴泉銘 欧陽詢(632) 漢字書体のうち、楷書は最も遅れて初唐7世紀に至り、その典型が確立された。九成宮はその唐・楷の代表作で、「楷法の極則」の名品である。九成宮故址は陜西麟遊県の山中にあり、原碑は今も保護えているという。

・孔子廟堂碑 虞世南(558) 楷書の担い手の双璧は欧陽詢と虞世南である。虞世南の字は欧陽詢に比べると少し「ゆるみ」があってのびのびと穏やかで、嫌味や癖がなく気品の高さがある。浙江越省餘姚の人。

・孟法師碑 褚遂良(596) 初唐の三大家。一点一画にこもる線の張りや字形に表れる緊張感など、シンの強い人だった。楷書はこれだという見本を作り上げてしまったことは見事であるという。

・自叙帖 懐素(777) 小さなころ仏門に入り、読経や座禅のかたわら習字にはげんだ。懐素の字は良寛さんが好んで勉強したとか。

◆明◆

・王鐸(1592) 河南孟津の人。「若さが前面に出てすごい迫力。自信が強いことは芸術家にとって必要で、強すぎると作品の品格が落ちる」との評。

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落款 落成款識の略で、書や絵画に姓名や号等を書き入れたり雅印を押して、作品の完成を表すこと。

五體字類 部首別索引の事典。

(元制作部・向井 市郎)

左・雁塔聖教序、右・鄭羲下碑
右から順に九成宮醴泉銘、左・孔子廟堂
左・乙瑛碑▽右・曹全碑
右から自叙貼、左・王鐸