2026.02.28
閑・感・観~寄稿コーナー~
昨春(2025年)に後期高齢者となり、痛みを伴う老体の衰えを自覚させられている。感情面も然りで、喜びや悲しみもひらたく薄らいだ。そんな折の2月初め、紙の書籍の活字本にまつわる感激と感動を深く味わうことができた。
岩波書店からの連絡で、拙著の岩波ジュニア新書『被爆アオギリと生きる 語り部・沼田鈴子の伝言』を読んだ神奈川県茅ケ崎市の中学3年生、福永結月さんの感想文が、第71回青少年読書感想文全国コンクール(全国学校図書館協議会、毎日新聞社主催、文部科学省、こども家庭庁後援、サントリーホールディングス協賛)で毎日新聞社賞に選ばれたと知った。福永さんは広島の修学旅行で平和記念公園の被爆アオギリと出会い、「アオギリの語り部」と呼ばれた沼田鈴子さんのことを知り、図書館で『被爆アオギリ生きる』を手にして一気に読んだという。
10年以上前の2013年に出版された書籍ながら、図書館で生き延び、時を経て中学生の福永さんに読まれたのだと思うと、手前みそながらこの活字本に感激しきりだった。
広島原爆で被爆した沼田鈴子さんは「お互いに手を取り合って、一粒の平和の種を、身近なところからひろげていきましょう」と呼びかけた。次世代を担う福永さんは、沼田さんの伝言を受け止めて、感想文に刻んだ。〈この本は違った視点から物事を見る大切さを教えてくれ、私を後押ししてくれる一冊になった>と記し、こう締めくくっている。〈争いは絶対に繰り返してはならない。誰もが平和を願う気持ちは同じで、そこに国や民族は関係ない。私は先人たちのまいた平和の種を育てあげたい〉
福永さんの感想文から感動を得たのは言うまでもない。
毎日新聞神奈川版の2月10日付紙面に、福永さんら県内の入賞者4人の喜びの声と写真が載った。記事によると、福永さんは<将来の夢は、国際連合で働くこと。「世界から戦争をなくし、平和を実現するために役立つ仕事をしてみたい」と意欲を語った>。天界の沼田さんは、平和の種が育ったね、と喜んでいることだろう。福永さんの写真を見つめて、心から「感動をありがとう」とお礼を伝えた。

SNSなどソーシャルメディアが勢いを増す時代にあって、電子書籍も目立つようになった。老体と重なる活字の行く末だが、紙の書籍の活字本には温かい手触りがある。加えて行間は想像力をかきたて、読書は奥深い。活字っていいな―と年甲斐もなく感懐にひたった。
(元編集局、広岩 近広)