2025.02.20
閑・感・観~寄稿コーナー~
放課後等デイサービスの送迎運転手のアルバイトで稼いだ月5万円程から原資を貯めて楽しむ。そんなルールを決めて好きな鉄道旅行にいそいそと出かけている。
若いころ、少ない小遣いを貯めにためて、国鉄の均一周遊券を買って貧乏旅行をしていた。車中で駅弁をほおばる旅行客がうらやましかったが、するめや都こんぶをしゃぶってひもじい腹を満たす旅も、気動車のディーゼル音を聞きながら車窓の風景を眺める楽しみがあり気に入っていた。60歳半ばを過ぎて、もう一度曾遊の地を訪れたいとの思いが私を駆り立てている
毎日新聞を3月で卒業した一昨年(2023年)は、それまでオタクっぽく見られるのが嫌で隠してきた鉄道好きの思いのタガが外れ、堰切るように乗り急いだ。4、5月に越美南線や明智鉄道、樽見鉄道、今なおナローゲージの軌道を走る三岐鉄道など中部地方の鉄道を乗り倒し、7月にはJR高山線、氷見線、えちごトキめき鉄道、あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道、のと鉄道を完乗。8月には妻の実家(綾部市の山里)が豪雨による土石流の被害に遭いその復旧作業の対応に追われたものの、12月に四国一周旅行を敢行して家族をあきれさせた。
年が明けて24年には、「今年こそは」と北海道と東北一周の鉄道旅行を企んでいたが、通っている吹田市の歯医者で「下の歯1本インプラント治療が必要です。費用は40万円」と言われガックリ。これまでにもインプラント治療で多額の費用を払っており、妻に相談したら「朽ちていく人間にこれ以上出資はできない。入れ歯にしたら」と非情の通告。自力で治療費をねん出することになって、この年の北海道と東北旅行は断念した。それでも「鉄分補給は必要」とイライラ解消のために、一路長野へ。楽しかったJR飯田線、小海線の旅のことを少しばかり話させていただきたい。
旅は、青春18きっぷ(私の若いころにはなかった)を購入して、7月24日から2泊3日で敢行。私の住んでいる京都府綾部市の綾部駅を午前6時9分の普通電車で出発し、正午過ぎには愛知県の豊橋駅までたどり着いたので、「ついでに天竜浜名湖鉄道を乗っとこ」と、掛川駅まで足を延ばし、この日は豊橋泊まり。翌日は豊橋駅からいざ飯田線の旅へと出発した。
飯田線には俗世間からかけ離れた気分が味わえる駅が数多くあり、あまたの秘堺駅ファンにとっては憧れの路線。当然に運行列車の本数も少なく、なので豊橋8時11分に出発し、まずは金野駅まで行って秘境気分をちぃとかじって折り返しの豊橋駅行の列車で本日のメイン「小和田駅」へ。ここは言わずと知れた秘境駅ファンのあこがれの駅。駅舎の看板に書いてあった「山ビル注意」の警告におびえながらも、しばし周辺を散策。皇后の旧姓にちなんで近年は愛の聖地にもなったらしく、少し離れたところにあったラブラブ椅子「お二人の幸せを呼ぶ椅子」に一人でドッかと座り、カップ酒を飲む。この日は上諏訪まで足を延ばし宿泊した。
翌26日は小渕沢駅から標高1000㍍以上の路線が続く小海線へ。若いころはミーハー気分で清里には何度か訪れたことはあるのだが、JRで最も標高の高い駅「野辺山駅」には初めて足を踏み入れた。ここから徒歩約30分、JR標高最高地点まで歩く。かつて小海線を走っていたSLの車輪がご神体の鉄道神社を参り、これで今回の鉄道旅行の目的は達成できた。帰りは、奮発して乗りたかった北陸新幹線を利用して軽井沢駅から開業したばかりの敦賀駅経由で帰路に就いた。青春18切符が2枚余ったので、翌月に1泊2日で広島呉線の旅も楽しんだ。
さぁて、今年は。行けなかった北海道の旅に7月行こうと企て、宿はすでに手配した。秋には東北一周の鉄道旅も強行しようと思う。さらに来年は九州一周の鉄道旅を敢行して、私の鉄道強行旅はひとまず完了。あとの余生はピンポイントで「うどんを食いに高松へ行こ」などと気ままな旅をと考えている。
(元福知山通信部、佐藤 孝治)