2023.01.16
閑・感・観~寄稿コーナー~
2016年から4年間、自宅のある大阪で留学生と交流するボランティアをした。来日し た若者に日本の暮らしの一端を知ってもらう目的で、それぞれ半年~1年の間、6カ国 7人の留学生と付き合った。若い人との交流はリタイア後の生活に刺激を与えてくれ、 中断を挟んで、今はコロナ後の再開を待っている。
神戸大で交流中の毎日新聞の先輩から、「阪大でやらないか」と声をかけられた。大阪 大は豊中、池田、箕面、吹田、茨木などの地元団体やホストファミリーを希望するボラ ンティア団体と連携して、春と秋の学期初めに留学生を紹介しており、毎回50組前後の組 み合わせができていた。
私はドイツ、米国、香港、台湾2人、スペイン、メキシコの学生を担当した。責任感 もあったが、学生が「楽しかった」と思ってくれたら十分だった。主にマイカーで学生寮に迎えに行き、伏見稲荷、東大寺、大阪城、伊賀の忍者屋敷などに行った。「一度は家庭訪問も」というのが大学の希望で、家庭料理を喜んで食べていた。
テキサスからの男子留学生は、「お茶とケーキを出すから友達を呼んでいいよ」と言うと、ロシア、韓国、ミャンマーと女子学生ばかり3人を連れてきた。ドイツの学生は 、マイスター(職人)の国らしく、ネットで「堺の刃物」を見つけ、お土産に包丁を買 って帰った。お父さんが休日も働いて定年を早め、果実酒づくりやキャンプを楽しんで いるといい、「日本では高齢者も働くのか」と驚いていた。調べると福祉の手厚さと平行して社会保障費に給料の約20%を天引きされるらしい。
フットワークが軽くテコンドーが得意な香港の男子学生は日本の田舎を旅し「香港で は私有地が少なく、皆狭いところに住んでいる」「滞在中になんとか日本語検定に合格したい」と話していたが、点数が足りなかったのだろう、何も言わずに帰国した。
テキサスの学生は、母校に帰り卒業。記念に卒業を証明するカードを送ってきた=写 真。日本でも有名な軍事産業の大企業に就職し「えっ、あの会社」と驚いたが、間もなく転職した。スペインの留学生はバルセロナ生まれだがドイツで教育を受けたそうで、 ミュンヘンの企業で働いている。
2020年に最後に担当した台湾の化学専攻の学生は、「試しに国際性のある日本の企業の試験も受けてみる」と言い、楽しみにしていたが、コロナ禍で門戸が閉じられ、 台湾で就職した。
7人のうち5人は理系。大学の授業は英語だけで済むそうで、本人がその気にならな いと日本語力は伸びないとも感じた。
この1年間は神戸大の学生を対象にした居留地巡りなどのイベントを手伝っているが、 「もう少し英語ができたら」と痛感し、時折、中学生向けの絵入りの英語辞書を開いて いる。
(元代表室愛読者センター・太田 正隆)