閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

車中泊の旅・北海道編(福田 久雄)

2020.03.29

閑・感・観~寄稿コーナー~

 2019年の6月で二度目の定年を終えました。(70歳)

 この機会に、かねてから抱いていた「車中泊」で各地を巡ってみたいという願望を果たそうと、早速7月9日から26日まで遊んできました。天気は夏空でとてもよく、雨は2日間で小雨程度だったので助かりました。

 

 コースは、基本的に海沿いを時計回りで巡りました。(函館市方面は行かず)

9~10日 我が家➝名古屋港➝苫小牧港

11日 苫小牧港➝札幌市➝三笠市

12日 三笠市➝富良野市

13日 富良野市➝美瑛町➝旭川市➝秩父別町

14日 秩父別町➝小平町➝苫前町➝羽幌町➝遠別町➝天塩町➝稚内市

15日 稚内市➝利尻島➝礼文島

16日 礼文島➝桃岩展望台トレッキング➝稚内市

17日 稚内市➝宗谷岬➝猿払村➝浜頓別町➝枝幸町➝雄武町➝興部町➝紋別市➝滝上町➝上川町➝層雲峡温泉

18日 層雲峡温泉➝黒岳登山

19日 層雲峡温泉➝旭岳温泉➝旭岳登山➝旭川市

20日 旭川市➝上川町➝遠軽町➝湧別町➝佐呂間町➝網走市

21日 網走市➝斜里町➝羅臼町➝標津町➝別海町➝根室市

22日 根室市➝浜中町➝厚岸町➝釧路町➝白糠町➝浦幌町➝忠類

23日 忠類➝広尾町➝えりも町➝様似町➝浦河町➝新ひだか町➝新冠町

24 新冠町➝日高町➝鵡川町➝苫小牧市➝登別市➝室蘭市

25日 室蘭市➝伊達市➝洞爺湖町➝真狩村➝共和町➝余市町➝小樽市

26日 小樽市➝舞鶴港➝我が家

 

【データ】

 宿泊場所 「船内」3泊、「道の駅」8泊、「宿屋」2泊、「駐車場」4泊

 走行距離  約2,700㎞

 ガソリン  約 278ℓ

 ガソリン代 約39,000円

 フェリー代  79,610円

 高 速 代   7,800円

 その他経費  116,600円

 

 今回は、往復ともフェリーを使用しました。大型フェリーは初めてだったが、揺れも小さく、色々とイベントなどがあり、長い船旅も飽きることなく過ごせ「ボーっと何も考えず、どこまでも続く真っ青な空と海を眺める」そんな時間も味わえました。

 札幌市は初めて行きましたが、予想よりも人が多く賑やかで大阪よりも大都市に見えました。有名な大通公園やさっぽろテレビ塔、唄に出てくる札幌市時計台や北海道庁旧本庁舎の資料館等を散策しました。

 観光地の「札幌」「富良野町」「美瑛町」「層雲峡」「小樽運河」などは、どこへ行っても人が多かったです。(主に外国人観光客)

 富良野では、市内を巡り、また富良野といえば『北の国から』の舞台になったドラマのロケ地が保存されている「麓郷の森」へ行き、ロケセットの「五郎の石の家」等を見学しました。また、ラベンダーのベストシーズンということで「ファーム富田」のラベンダー畑へ行きました。この近辺には沢山のラベンダー園があり、ゆるやかな丘に紫色のラベンダーをはじめ、色鮮やかな花々が広がっていて、眺めは最高でした。ラベンダーソフトクリームや富良野メロンを食べながらゆっくりと楽しみました。

 美瑛町では、美瑛の丘「パノラマロード」を眺めながら、CMのロケ地にもなった風景が多い「パッチワークの路」へ行きました。1972年に日産自動車「愛のスカイライン」のケンとメリーのCMで取り上げられたポプラの木なども見ました。

 稚内では、稚内駅の駐車場に車を止めて置き、ハートランドフェリーに乗り「利尻島」と「礼文島」へ行きました。各島では、観光バスで島内を巡りました。利尻島では、「利尻町立博物館」を見学し、「オタトマリ沼」を一周しながら草花を楽しみ、飲食店では朝採れたばかりのウニの軍艦巻きを食べました。美味しかったです。

 礼文島では、最北端の岬で「スコトン岬」や「澄海岬」などを巡り、島中に広がる高山植物の花景色を楽しみ、この日は礼文島のユースホステル「ユース桃岩荘」で一泊しました。「ユースホステル」に泊まったことで、この歳になって若者たちと歌ったり、踊ったりした事に場違いを感じ違和感があった。しかし、ふと青春時代に残し忘れていたものを思い出したようにも感じた。

 翌日は、朝5時に起床、昼食用の弁当を作ってもらい、礼文島のトレッキングコース「桃岩展望台コース」のスタート地点まで送ってもらった。海岸線から高山植物を観察しながら桃岩展望台へたどり着くと、頂上から眺める元地海岸は絶景でした。下山の途中で「北のカナリアパーク」へ寄ってみました。吉永小百合さん主演の映画『北のカナリアたち』の撮影ロケ地がある場所です。舞台になった「麗端小学校岬分校」が保存され公開されていたのでゆっくりと見学をしました。「桃岩展望台コース」は約4時間のコースですが、下山してからも島民の家や漁村を巡りながらフェリー乗り場まで歩きました。12時過ぎに到着。昼食を済ませ、稚内駅まで帰る。

 北海道の道路は、道幅が広くて、直線コースが多く、どこまで行っても綺麗に舗装されていて、車や信号も少なく、とても走りやすかったです。「留萌市」から「天塩町」までを日本海に沿って走る道(天売国道)。「稚内」「宗谷岬」から「興部町」までのオホーツク海沿いを走る道(宗谷国道)(オホーツク国道)は、どこまでも海の景色が続き最高のドライブになった。来てみてよかったなあと思えた瞬間でした。

 北海道では、どこの「道の駅」に行っても沢山の車中泊車が止まっていました。仲間意識で話す機会があり、大阪、兵庫、奈良、三重、和歌山の人達と交流がありました。車の造りや、装備等で話しました。一人旅や夫婦連れの人、大阪から毎年来ていると言う50代くらいのおばちゃんの一人旅の人もおられました。

 夏になると毎年来る人が多いみたいです。空の青、海の青、山、丘、林道と見渡せて目を遮るものは何一つありません。この晴れ晴れとした気持ちよさに心が奪われてしまうと、二度三度と来てしまうのかもしれません。私もまた来てみたいと思いました。

 折角北海道まで来たので、大雪山の「黒岳」へ挑戦しました。「黒岳」は高山植物の宝庫です。朝6時半にスタートしロープウエーとリフトを利用すると7合目に到着です。そこから黒岳(1984m)まで1時間15分、次の黒岳石室まで25分かかりました。ここで下山するか前進するか考えたのですが、早く出発したことでまだ9時でした。避難小屋の管理人にコースと時間を聞いて、北鎮分岐➝間宮岳➝北海岳➝黒岩岳石室(4時間40分コース)を尾根伝いに回ることを決め前進しました。北鎮分岐まで行くと、その先が雪渓になっていました。少しの距離なのですが、急斜面なので滑ってしまうと大変なことになるのでここで引き返すことにしました。夏山登山のつもりで軽く考えていたことで装備不足でした。7合目から黒岳までの道のりは左右に高山植物が咲き乱れているので、たびたび足を止め観察したり、写真を撮ったりと楽しみながら歩くことができました。

 あくる日には、「旭岳」にも登ってみようと思い、6時半スタートで層雲峡温泉から旭岳温泉へ移動しました。8時5分に到着。休憩なしの走行でした。(98㎞)

 旭岳は大雪山連邦の主峰で標高2,291m。北海道最高峰。旭岳ロープウエーに乗れば、5合目まで10分で到着。散策コースがいくつかあって、夏には希少な高山植物に出会え、あちこちから聞こえる鳥の声に耳を澄ましながら、極上のおいしい空気を胸いっぱいに吸い込めます。

 「姿見の池」周辺を少し散策した後、頂上へ登ることに挑戦しました。なだらかに広がる山の斜面を登っていくと、振り返ればふもとの湖や点在する花々、裾野のまちまで遠く見渡せ爽快だった。

 登るにつれ緑は姿を消し、ガレと呼ばれる険しい岩場の状態になる。斜面はけわしくなり、登山道も狭くなってくる岩場のがれ状態の山道を進む。前を見ても後ろを見ても蟻のように登山者が続いていた。

 7合目を過ぎたころから小雨が降り、モヤも出てきた。ここまで来たら頂上まで登りたいと急いで歩き出したが、下山する人もいてどちらにしようかと迷った。カッパを着てみたが汗をかいていたので寒気も出てきた、周りはモヤで見晴らしが悪く8合目まで登って下山することにした。8合目で記念写真を撮る。

 下山用のロープウエーを待っていると、雨も強くなり次々と下山者が帰ってきた。頂上の状態を聞くと、何も見えなかったと言っていたので下山が正解だったかなと思った。広大な山地に高山植物が咲き乱れていて、よい時期に来て良かったと思いました。

 網走市では、「博物館網走監獄」へ行きました。旧網走刑務所の歴史的建物25棟を保存展示する野外博物館です。8棟の重要文化財と6棟の登録有形文化財があります。重要文化財に指定された木造行刑建築群と北海道開拓を担った網走監獄の歴史が詰まった博物館だった。1,200人の囚人が、網走から旭川まで繋がる中央道路の開削にあたり、163㎞をわずか8ヵ月間で完成させ、北海道の大地を貫く道路や鉄道も、農地も切り拓いたのは囚人だったことを改めて認識した。

 今回は海沿いを走ったことで、沢山の岬を見ることができました。「黄金岬」「宗谷岬」「神威岬」「納沙布岬「襟裳岬」「地球岬」。

 どの岬にも朝早くか、夕方の到着だったので、風が強く吹いていたり、霧が出ていたり、波が荒かったりで寂しげな岬めぐりになりました。

 新冠町は、ハイセイコーやナリタブライアン、マヤノトップガンなど、全国の競馬ファンをわかせた名馬の産地です。道の駅「サラブレッドロード新冠」にはハイセイコー号の馬像や新冠で生産され輝かしい実績を残した名馬たちの「優駿の碑」が設置されていました。

 近くに乗馬クラブがあったので「体験トレッキング」を行いました。初めての乗馬です、林道をゆっくりと50分間のトレッキングができ貴重な体験でした。

 広尾町とえりも町の間に4つのトンネルがありますが「目黒トンネル」と「えりも黄金トンネル」がとても長かったことが記憶に残っています。こんなトンネル工事を完工された方々の偉大さを感じながら走行しました。

 風呂といえば、車中泊の旅でしたが毎日入りました。風呂のある道の駅を選んだり、温泉地の日帰り温泉だったり、スーパー銭湯や地元のお風呂屋に入ったりとしました。

 道の駅で8泊しましたが、湧別町の道の駅「かみゆうべつ温泉チューリップの湯」は新しい施設でとても良かったです。開店の10時を待って入ったので、客は3人程でゆっくりと風呂を堪能できました。

 各地で食べた主な物を思い出すと、富良野市(寿司)、秩父別町(ほっけの開き)、旭川市(ラーメン)、稚内市(海鮮定食)(寿司)、利尻島(ウニの軍艦巻き)、礼文島(うに丼)、網走市(寿司)、根室市(寿司)、新冠町(刺身定食)、小樽市(寿司)と寿司が多くやっぱり魚貝類は新鮮で美味しかったです。

 今回の旅で沢山の思い出が出来ましたが、もう一つ記憶に残っていることがあります。斜里町の綺麗な海沿いを走ると有名な「オシンコシンの滝」があるのですが、そのずっと手前に180度海を見渡せる洒落た喫茶店がポツンと一軒ありました。真っ青な180度の海を眺めアイスコーヒーを飲みました。女性店主に「きれいな景色ですね」と言うと「同じ景色でも毎日、また四季に応じて景色が変化し飽きませんよ」とおっしゃっていました。店を出てからも、しばらく素晴らしい景色に見惚れていると店主の兄(78歳)という方が出てきて「どこから来られましたか」の問いから始まり30分くらい話すことになりました。

 この方の親がこの地域での開拓者で切り開いたそうです。親の後を継いで今ここに住んでいる。店は妹さんがしておられるそうです。隣の地には、大きな別荘を持っておられました。この地から札幌市内の店などへ電話だけでお酒類を卸す仕事をしているらしいです。

 いろんな話題の中から体験上の事をいろいろと教えていただきました。『①何もしないことが最高の贅沢です。②動けるうちにしたいことをしておくこと。➂定年後は人生のご褒美の時間です。④景色の良いところでキャンプか民宿などの連泊が良い。⑤歳を取ればマンション住まいが良い。⑥子供たちが近くにいることが良い。⑦病院が近くにあることが良い。』話の内容は大まかにこんなことだったと思う。今回の一人旅で人とあまり語り合うことがなかったが、こんな形で全く知らない人と話すことができ何か新鮮な会話に思え記憶に残っている。今の自分の立ち位置を再認識できたようで、この出会いが一番の収穫のように思える旅だった。

(元工程センター・福田 久雄)