2020.02.04
閑・感・観~寄稿コーナー~
「男子厨房に立つべからず」なんて言ったのは昔のお話です。現代男性は楽しみながら料理の基本くらいば身につけましょうとの志が、嬉しさになりつつあるようです。私たちOB会の目的は「一人でも多くのシニア男性を家から外へ、地域へと引っ張り出して社会との繋がりを持って頂くこと」です。きっと大きな生き甲斐が生じることと思います。
男の料理教室「男の腕まくり」は、毎日新聞を退職し時間的な余裕が出来た時、妻から「お暇なら料理でも習ったらどう。料理が出来れば、あなたも私も助かります」と言われていたところ、丁度、羽曳野市の広報で「男の料理教室」が開催されていることを知り、「ようしこれに参加しよう」と決心したのが始まりでした。
この料理教室は「男性は仕事、女性は家庭」という考え方を払拭し、男女共同参画社会の実現を目的に開催されたもので、2007年に参加しました。この料理教室での経験が楽しく、「これではもったいない」との思いから、数人のメンバーで「男の腕まくりOB会」の発足を市に提案し、「きちんとした組織を作り、責任を持って運営すること」を約束した結果、市も大賛成で発足となりました。
しかし、OB会の立ち上げに至るまでは大変でした。会員の募集、講師の選定、年間の教室日程と教室の確保、会費の設定など市側と数十回に及ぶ話し合いをしました。一番の問題は、全国で男の料理教室は沢山生まれているが、多くが短期間で閉鎖している実態でした。そのため、単なる男の料理教室から「素晴らしい熟年男性の集団に成長すること」を目指そうと目標を一段上げました。
現在、14年目を迎えていますが、数年前から料理教室を主として、教室以外に3つのクラブを誕生させました。
①会員同士の連絡事項を徹底するため、毎月「パソコン教室」を開き参加してもらう。
②会員同士が楽しむ「カラオケ教室」を毎月開催しています。
③健康第一と毎週「グラウンドゴルフ練習会」を開いています。
さて、会員のご家族の反響は如何と問うと、「主人は退職後、家に居ることが多くなりがちで、夫の食事を心配して外出は難しかったが、夫が料理やグラウンドゴルフに行ってくれるので、少しずつ出やすくなりました」との声を聞き、良かったと喜んでいます。但し、奥様の「料理の腕はまだまだですよ」は本音でした。
一方、料理の専門家は、シニア男性が料理をする意義は大きいと言う。それは料理で扱う分量計算や包丁の扱いなど、手先を使う作業は認知症予防の効果があるとの事です。
新入生には、「本来、料理は楽しいものです。気負わずに最初の一歩を踏み出してほしい」とお話します。そして数年たつと包丁の研ぎ方から煮物の煮つけや魚の捌きも習いましたので、最近は出かける女房に「昼ごはんは、お願いね」と言われたら嬉しくなって、「女房元気で留守も良し」と、会社勤めの現役時代とは打って変わって、家庭円満の洒落も出るようになりました。
ここでチョット実際の料理教室を覗いてみます。教室は市の陵南の森公民館の料理実習室です。両端にガスコンロと流し台のついた調理台が6台並んでいます。1台の調理台に5人ずつ総員30人のメンバーです。ここで包丁や菜箸を片手に、元気良く動き回っているのは平均年齢75歳の団塊世代です。
今日のメニューはホタルイカの生姜炊きです。
「先生、ホタルイカの目と嘴を取るコツは」「鍋に生姜を入れて煮立てるのは強火ですか」「先生、強火でひと煮、火を止めるって?」。先生から「焦さないようにすることです」。
いろんな質問が飛び交う和気あいあいの雰囲気です。先生は料理人の男性講師と地元の女性料理研究家が月により交代で指導です。どうやら男ばかり野教室では、女の先生の方が人気があるようです。
教室が14年間も続いているのは、単に料理の楽しさだけでなく、会員の中には「生涯勉強の場を目指したい」との猛者も数人いるからでしょうか。
30人のメンバーが6台のテーブルに5人ずつに分かれての実習ですが、料理の経験に差があるため、各台を纏めるリーダーを配置し、各台とも進捗状況は揃えています。リーダーは毎年互選し、いわゆる先生の助手的な存在です。
料理教室ではチームワークが大切です。同じ釜の飯を頂くので、毎年、新年会と納涼会を行い、メンバーの親睦を図っています。
一方、料理のメニューは皆さんの意見を参考にするため、毎年4月に総会を開き、年間の会計報告等も行いながら、希望のメニューを出してもらい、先生と調整しています。また過去13年間に亘るメニューは全部保管していますので、希望のメニューは復習を兼ねて再登場出来ます。
出来上がった料理を試食した後は、片づけと掃除が待っています。これも疲れていますが徹底的に指導します。この食後の片づけが家庭でも発揮され、奥様から感謝されているようです。これを聞いた先生からは「さずが素晴らしい熟年男性たちですね、根性が違うね」と褒められ、チョット照れます。
さて、嬉しいこともありました。
◇2019年、羽曳野市市政60周年行事で、「市政の発展と住民福祉の向上に大きく寄与されました」と感謝状を頂き、広報に掲載され大喜びしました。
◇2008年にはタウン誌「らくうえる南河内・680円」に4ページで紹介されました。
◇2010年にはNHK「おはよう日本」に、ニュース番組でTV放送(約5分)されました。
◇2012年に内閣府男女共同参画局より「男性の地域社会への参画、好事例集」が発行されました、全国456地域より応募があり、23例が採用されました、この中に私たちの「男の腕まくりOB会」が採用され、「生き生きと活躍している男性の事例である」と評価を頂きました。羽曳野市は大喜びでした。
◇2015年10月28日の読売新聞家庭面に、「男の料理教室」として掲載して頂きました、あちこちからの反響の大きさにビックリでした。
2020年は「男の腕まくりOB会」は14年目を迎えています。私たちの活動は徐々に市民に伝わりつつあります。市民からは「うちの夫もお願いします」といった嬉しい電話もちらほら出始めました。男の料理教室を通じて羽曳野市に貢献できるのは何か?と会員同士で話せるようになりました。同時に会員それぞれが、男の料理教室の楽しさを発信しようと頑張っています。
目標は「元気で明るい、素晴らしい熟年男性を目指そう」です。
(元写真製版部・國領 邦雄=男の腕まくりOB会会長)