2020.01.24
閑・感・観~寄稿コーナー~
いつだったのか覚えていないのですが、横綱貴乃花が投げを打った際、顔から徳俵に落ちて額を切り、大量出血した。手をついていたら負けていたでしょう。何という勝負へのこだわり。ストイックなまでのプロ意識に感服したのを覚えています。
貴乃花と比べるのは失礼だけど、僕も今日2020年1月15日、カキいかだで顔面から落ち、足場の木材に前歯を強打しました。当たった瞬間、歯が折れた感じがしましたが、カキが入ったかごは海に落とさなかった。幸い、歯は何ともなかったです。貴乃花と違い僕の場合は、足を滑らしただけの無様な姿なのですけれど。
2019年秋に就職したマルコ水産(広島県福山市内海町)は、メインの海苔養殖以外に、カキ養殖も手掛けています。いかだに吊るしたカキは成長具合にいろいろ差があって、マルコでは151~180gをL、181~200gを2L、201g以上を3Lと決めています。最も注文が多いのがLなのですが、これを発掘するのが中々難しいのです。
僕は同僚と2人、いかだからホタテに付着したカキ群10本を吊り上げ、船の上でホタテから剥がす作業に明け暮れました。200gを超えるとさすがにでかいと実感します。マルコに就職して、僕はもうどれだけ重さを量ったでしょう。どでかいワラジのようなカキでも、280gを超えたものは見たことなかったのですが、きょうはとんでもないヤツを発見しました。
「うん、これは間違いなく伝説の300超えだ」。そう思ってきれいに汚れを落とし、水洗いして量ると何と何と348gもあるではありませんか。
僕はもう大興奮して、兼田敏信社長に見せたくて事務所に走る。事務所に行くと奥さんの緑さんが「お疲れ様」。僕は間髪をいれず「奥さん、これ350gもあるんです。見たことない大きさです。兼田家にプレゼントします」とはしゃぐ。「へぇー、そうなんじゃね。社長の晩御飯にいただきます」と笑顔の奥さん。でも、変か。僕の持ち物でもないのに、差し上げるは変か。
外に出ると、兼田社長がいました。同じ説明をすると、「おお、そうか。殻の形もええけぇ、身が詰まっちょりそうじゃのう」と喜んでくれました。
痛い目をした甲斐があった一日でした。
(元広島支局、元田 禎)