閑・感・観~寄稿コーナー~
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コアジサシ 夢洲 生物多様性(藤田 修二)

2026.04.11

閑・感・観~寄稿コーナー~

 2025年3月、環境省は5年ぶりに「鳥類及び爬虫類・両生類のレッドリスト」を公表しました。鳥類では108種が絶滅危惧種とされました。前回より10種増えています。この中でコアジサシ(写真)について紹介します。

 コアジサシはツバメ同様に東南アジアから日本などに渡って来て砂浜などで繁殖する夏鳥です。カモメ科アジサシ類。空中でホバリングして水中に突っ込み、魚を捕まえます。今回のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類から絶滅危惧ⅠB類に絶滅危惧の危険度が上がりました。ⅠB類とは、「近い将来に野生で絶滅する危険度が高い」カテゴリーです。

 昨年、大阪湾の夢洲で万国博覧会が開かれました。夢洲は浚渫土砂や廃棄物で埋め立てられた人工島ですが、万博前はコアジサシの最大1500巣の営巣が確認されていました。シギ・チドリやカモなどの鳥たちも多数見られ、大阪府生物多様性ホットスポット55か所の中でも最も重要なAランクに選定されていました。

 公益社団法人大阪自然環境保全協会、日本野鳥の会大阪支部など自然保護団体は博覧会協会や大阪府・市に、万博会場造営に際し、自然環境を保全するよう強く働きかけましたが、ほとんどかえりみられることはありませんでした。これは、2005年の愛知万博の会場が猛禽オオタカの営巣が確認されたことにより大きく変更されたことに比べて随分後ろ向きの姿勢だったと言わざるをえません。

 万博以後夢洲の鳥たちは姿を消しました。万博とは別途IR(統合型リゾート)施設の建設も進んでいますから、これからも鳥たちの復活については期待薄です。

 2022年の生物多様性条約COP15では2030年を目標とした昆明―モントリオール生物多様性世界枠組みが締結されました。①失われた自然の30%を回復させる②陸・水・海域の30%を人と自然の共生する地域として守り育てるというのが代表的なものです。いわゆる30by30とされるネイチャーポジティブな目標です。締約国である日本もこの目標達成に向かって動かないといけません。現に全国各地で「自然共生サイト」を創生する官民の動きがあります。

 機械的に言えば夢洲の30%は湿地や草地として復元しなければなりません。しかし、夢洲の今後に関する自然保護団体の要請に対する行政の動きは極めて鈍いままです。

 実は私が住む神戸の人工島六甲アイランドの南側に近畿全域の廃棄物を受け入れる処分場のひとつがあります。この西側にさらに新たな処分場を造る計画に関する2021年のアセスメントでは、この一帯でなんと約25000羽ものコアジサシが確認されました。もちろん他の多様な多数の鳥も確認されました。しかしここも埋め立てが完了すれば港湾施設にするというのが神戸市の計画です。

 大阪湾はかつて全国有数の渡り鳥の中継地、繁殖地でした。しかし、現在の自然海岸は1%しかなく、昔の面影はありません。上記自然保護団体は、これからは夢洲から大阪湾全域に目を向けて生物多様性の回復を目指すとしています。世界的な影響力のある英国の王立鳥類保護協会も協力しています。

                       (元社会部 藤田 修二)