閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

パソコン囲碁(桜井 一郎)

2021.10.21

閑・感・観~寄稿コーナー~

 昭和12年生まれ、84歳を迎えました。京阪電車のホームから線路に転落して腰の骨や右ひじも骨折したり(72歳)、食道がん手術と肺へ転移で抗がん剤治療に耐える(77歳)など、人並みに危ない目にもあいましたが、その都度生き返り、この歳まで生き永らえてきました。

 最近の日常をお知らせするのが、きょうのテーマです。酒、プール、囲碁の3点セットでお話します。

 まず、酒について。成人してからの人生を振り返る時、必ずそばにへばりついているのが酒にまつわることです。ホーム転落事故も久しぶりに逢った友人たちと夜の街で飲み歩き、タクシーで帰ればよいものを、まだ終電に間に合うと三条駅に戻ったために、ドジを踏んだわけです。飲み友達も少なくなり、外で飲むことは、ほとんどなくなりました。しかし、晩しゃくは絶対欠かしませんし、昼食も缶ビール付きです。自慢するほどのことはないのですが……。

 次はプール。サラリーマンを卒業して以来、近くのコナミスポーツ伏見店へ通っています。転落事故以後、杖歩行ですが、自転車ならば15分ほどの距離です。近ごろは泳ぐというより水中歩行が主です。プールから上がってサウナに入り、約2時間の健康づくりです。

 さて、本番の囲碁。近くの碁会所が店を閉めてしまったため、パソコン碁に乗り換えました。パソコン碁は機械相手のゲームではなく、生の人間が相手です。最近ではいろんな囲碁サイトが存在するようですが、私が入っているのは「サンサン棋院」です。年会費が1万円、早朝でも深夜でも、囲碁好きのおっちゃんやおばちゃんが、待っていてくれます。

 私の腕前は、恥ずかしながらせいぜい初段。初段の免状はちゃんと関西棋院から、いただいております。高校生のころ、親父から手ほどきを受けたのですが、勉強や仕事が忙しくて(?)。ずっと離れおりました。サラリーマンを卒業して、さて、何をするかと考えた時に、囲碁が出てきました。

 初段の免状をいただいたのは、確か60歳のころだったと思うのですが、碁会所時代、そしてパソコン碁に転向してからも、実力は全く上がりません。番数を打つだけで、少しも勉強しないからです。

 パソコン碁を始めるのは、たいてい夕食後。二階に上がり、パソコンの前に座り、スイッチを入れると、いつもの面々が待っていてくれるのです。

 ずっこけた登録名もたくさんあります。名前はちっとも構わないのですが、気分の悪い打ち手も何人かいます。そんな打ち手と対戦となると、カッとなってしまい、悪手、悪手の連続で負けてしまうことが実に多いのです。そんな時、いつも悔しくて声を荒らげ、足で床を踏みつけるものですから、階下から妻が「静かにしてちょうだい。身体にも悪いですョ」と声がかかり。ます。

 歳をとるにつれ、怒りっぽく、気が短くなっていくいようです。「もう、オレ、囲碁はやめる」と、何度くち走ったことでしょう。それでも、今夜もまた、パソコンの前に向かいます。

                       (元地方部、桜井 一郎)