閑・感・観~寄稿コーナー~
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昭和の風景~朝日新聞社と芸能合戦

2019.07.02

閑・感・観~寄稿コーナー~

 毎日新聞大阪本社の古い社報用の写真の中から、「これはなんだろう」という珍しいショットを見つけました。時は昭和36(1961)年1月10日。「源平芸能合戦」の看板の下、社員らしき人たちが武者姿でテレビカメラの前におさまっています。別の写真には、毎日新聞社旗を持った一団が客席にならび、応援を繰り広げている。どうやら、合戦の相手は朝日新聞社らしい。

社報やテレビ局で調べてみました。

「源平芸能合戦」は、当時、人気の公開バラエティ番組で、一般参加者を源氏と平家にみたてて、歌謡曲や物まね、踊りや演劇などの出し物プラス応援で競い合うものでした。足袋でおなじみの「福助」の一社提供番組で、火曜夜8時から、ということからも人気ぶりがわかります。系列局が週替わりで制作し、このときはABCが担当ということで、ABCホールで収録されています。審査員もなかなかの顔ぶれで、ABCの記録によると、指揮者の朝比奈隆、作曲家の高橋半(なかば)、上方舞の山村若。司会は福ちゃん(当時のラジオパーソナリティーで、もちろん今の福ちゃんではありません)。

さて、結果はどうだったでしょう。毎日新聞社報はこう記しています。

 

折から戎(エビス)さんででにぎわう一月十日午後八時からテレビ番組でおなじみの「源平芸能合戦」に朝日新聞社と対戦した。だしものは⑴小唄ぶり、辰巳⑵立体声色⑶珍版、那須与一⑷民謡、ソーラン節、のバラエティに富んだ強力番組でのぞみ・・・(中略)。残念ながらわずか一点差で惜敗した。

 

番組はこのあと1964年まで続いたようです。新聞社以外のライバル企業対抗は、日本航空VS日本郵船、文藝春秋VS新潮社、日野自動車VSプリンス自動車、日本電信電話公社VS国際電信電話、富士フィルムVS小西六など、懐かしい名前も並んでいます。

昭和は遠くなりにけり。

                            (渡会 文化