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新刊紹介 90歳・秋山哲さんが4冊目の小説を発刊=東京毎友会のHPから

2025.03.11

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 自作の小説四冊目を発刊した。これまでの三冊と同じように、アマゾン方式のオンデマンド出版である。2025年2月21日からアマゾンと楽天で販売している。東京・神田の「ほんまる」というユニークな書店でも販売している。

 改めてオンデマンド出版の説明をしておくが、パソコン作業によって、原稿制作、整理、校閲、割り付けなどの作業を全部自分で行う。出来上がったデーターをアマゾンに流し込む。購入者が現れるたびにアマゾンのシステムから自動的に印刷・製本された書物が送り出される。

 こういうシステムで、著者側には実質上コストゼロである。販価は、アマゾンの計算方式に従って著者が決定できるので、印税的な部分は著者の選択でどのようにも決めることができる。アマゾンは、需要者が現れて初めて印刷・製本などのコストが発生するが、在庫は常にゼロである。一冊も売れなくても一銭の損もでない。

 一般の自費出版は高価で、100万円も200万円もかかるが、アマゾンのオンデマンド出版ならコストゼロで出版が可能である。しかも、内容にはアマゾンは口を挟まない。文芸作品でも学術論文でも自分史でも、法律に違反するようなものでなければ、どのような作品でも出版が可能である。私程度の少々のIT技術さえあれば、究極の「出版の自由」が実現するのである。

 私がIT技術者でないことは皆さんご存じの通りである。少々苦労するのは表紙つくりである。これは私の技術では無理がある。したがって私の本の表紙は題名を示すだけの単純なものにしている。これがかえって単純ですっきりしていてよい、という評判をもらっている。

 これまでに出版したのは『耳順居日記』(2020年)『南進の口碑』(2022年)『金吾の黒』(2024年)の三冊であった。

 今回は『短編集 方円の水三相』というタイトルの短編集である。230㌻で売価1980円にしている。

 三つの短編を組み込んでいるが、一つ目は、「プールの水は冷たいか」という題。自分史の一部のようなもの(もちろん小説だから全体としてはフィクションである)で、京都支局の新人であった時の大失敗から話を始めている。新聞記者物としては初めてとなる。

 二つ目は「逃げ水天使」で、会社が倒産し、妻との些細な喧嘩から家を飛び出した男の話である。公園の休憩所の柱に「成功して帰ってくる」と書きつけるが、地震に出会ったり、詐欺事件のとばっちりを受けたりして、50年経って成功することなく戻ってきた時には妻は亡くなっている、という悲恋の話である。

 三つ目の「天寿の濁り川」は、海外でも大きな商売をしていた京都の老舗の物語である。この家を率いた大旦那が百歳で亡くなるが、葬式に現われた知らない男性が一族の一人であることがわかる。この人は誰の子か、謎が深まっていく。その謎解き物語である。

 このように、時代も背景もテーマも全く異なる三つの物語を読んでいただこうという企画である。よほどお暇な方はどうぞお買い求めください。

                       (秋山 哲)

 *秋山さんは元常務。1957年入社、大阪本社経済部長→同編集局長→経営企画室長。「新聞革命」を断行、題字を現在のインテリジェントブルー、レイアウトも1㌻15段から12段、紙面の真ん中で折れる「腹切り紙面」に変えた。1991(平成3)年11月5日朝刊からだった。その経緯をまとめた『「新聞革命」の記憶—MAP30周年を迎えて』(2021年刊)をオンデマンド出版している。

 著書に『本と新聞の情報革命―文字メディアの限界と未来』(ミネルヴァ書房、2023年刊)。

=東京毎友会のホームページから2025年2月27日

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https://www.maiyukai.com/book/20250227