2024.03.03
先輩後輩
日野行介さんは、新著を執筆したいきさつについて、自身のフェイスブックに綴っている。
――本書は、福島第一原発事故を全身にまとった井戸川克隆という「怪物」の正体を暴こうと何度も挑みかかり、厚い壁にはね返されてきた私の長い苦闘の軌跡でもあります。この毀誉褒貶の激しい怪物は簡単には正体をつかませてくれませんでした。最初のインタビュー(2013年)は手も足も出ないコールド負け。福島知事選(2014年)でも敗れたものの何とか手掛かりらしきものをつかみました。そして彼の側を離れられない「双葉の民」との集まりに入り込み、彼らとの関わりをひたすら観察することで、この怪物が吞み込んでいる矛盾と葛藤がようやく見えてきました。かかった時間は10年。それは、この事故が彼らから奪い取った「被害」と切り離せないものでした。被害はあの事故が起きた直後の恐怖だけではなく、ましてや健康被害だけでもありません。ウソと隠蔽、押し付けで進める国策によって今も被害は拡大を続けています。この事故の被害が何なのかを今も考え続けている方に読んでほしいです。
出版元である平凡社の内容紹介には「東日本大震災での原発事故で全町避難を余儀なくされた双葉町の元町長・井戸川克隆。故郷を壊す国策に抗う男の闘いを、町民への情や葛藤とともに描き出すノンフィクション」とある。
日野行介さんは『調査報道記者――国策の闇を暴く仕事』を2022年6月に刊行。福島第一原発事故後、数多くのスクープを通じて隠蔽国家の正体を暴き続け、「原発戦記」の集大成ともいえる書籍を刊行した、と評された。2023年には『情報公開が社会を変える 調査報道記者の公文書道』(ちくま新書)を刊行し、毎日新聞読書欄でも「真実を知り、民主主義を守るためには私たち一人ひとりが行政を監視し、政策をチェックすることが求められる」とのコメントが紹介されている。
東日本大震災から3月11日で13年。
(高尾 義彦)
『双葉町 不屈の将 井戸川克隆 原発から沈黙の民を守る』は平凡社発行、定価2420円(本体2200円+税)
日野 行介(ひの・こうすけ)さんはジャーナリスト・作家。1973年生まれ。元毎日新聞記者。社会部や特別報道部で福島第一原発事故の被災者政策や、原発再稼働をめぐる安全規制や避難計画の実相を暴く調査報道に従事。著書に『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』(岩波新書)、『除染と国家――21世紀最悪の公共事業』(集英社新書)など。=しんぶん堂ホームページから
=東京毎友会のホームページから2024年3月1日
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