2022.10.05
先輩後輩
國枝すみれ著『アメリカ 分断の淵を行く』(毎日新聞出版刊)が今週発売の「週刊文春」2022年10月6日号読書欄で紹介された。
「アメリカで長期にわたる取材経験がある私でも二の足を踏むような取材現場に、女性の新聞記者が足を運ぶ姿には驚嘆せざるを得ない」と評者の横田増生さん。『ユニクロ帝国の光と影』の筆者だ。
《登場するアメリカ人の多くは、スラムや国境、最果ての島など「辺境」に住んでいます。金と権力に縁がなく、悲しみや苦しみが凝縮している場所――。取材をしながら、こんなアメリカがあるのか、そんなアメリカ人もいるのか、と驚きました。固定観念がばらばらと崩れていきました。そして、私にとっては、困難の中でもがき、不条理や恐怖と闘っているアメリカ人が、ハリウッド俳優よりも輝いて見えたのです》
これは、この毎友会HP新刊紹介で國枝さん自らが書いたものだが、面白い話があるとすぐ現場へ行ってしまう記者なのだ。
ボーン・上田記念国際記者賞を受賞した「原爆ルポ60年ぶりの発見」=2005(平成 17)年6月 117日毎日新聞朝刊1面=は、長崎原爆投下の1ヵ月後に惨状をルポしたアメリカ人ジョージ・ウェラー記者の未公開の原稿・写真を発掘・取材したものだ。
湘南高校の新聞部員だった、と同窓会報にあった。慶應義塾大学法学部に進み、アメリカへの留学。英文毎日で英語に磨きをかけたのか。
いつまでも面白がり精神を失わず、得意の英語を活かして益々のご活躍を!
(堤 哲)
※「日刊ゲンダイ」9月6日号にも以下の書評が掲載されています。
「アメリカ分断の淵をゆく」國枝すみれ著
今年秋の中間選挙を前にトランプ派の勢いが増すアメリカ。分断の悩みは深い。
毎日新聞記者の著者。生まれつき自立心と好奇心が旺盛らしく、大学時代にアメリカ留学したときは、たいして英語もできないのに「水を得た魚のよう」といわれたという。
日本の同調社会におさまらない個性が、親しんだアメリカの苦境に心を痛める。
訪問先は鎮痛剤オピオイド中毒に苦しむ貧しいウェストバージニアの被害者たち、人種差別むきだしのケンタッキーの白人至上主義団体、世論を二分した尊厳死を実行するオレゴンの終末期の老人たち、反黒人差別のBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動が発祥したカリフォルニア州オークランドの黒人ボランティア……。
ネオナチの集会にも誘われると「行きます!」と即答する一方、反人種差別のBLMは「白人や警察官が黒人を殺したら問題にするけど、黒人が黒人を殺しても問題にしない」と期待しない黒人少女を前にことばを失う。
単刀直入で硬軟自在。体当たりの積極性で難しいとびらを次々に開けていった様子が行間からうかがわれる。終章ではキング牧師の理想をうけつぐはずのBLMに対して「黒人の命は大切じゃない!」と叫ぶ白人少女を目撃する。
(毎日新聞出版 1980円)
=東京毎友会のホームページから2022年9月30日
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https://www.maiyukai.com/topics#20220930