2022.06.28
先輩後輩
２０２１年、５月～７月にかけて東京毎友会のホームページで、福島清さん（元毎日新聞労組本部書記長、その後制作局次長）が随筆「岸井成格さんの父・寿郎さん」を①〜⑩回に分けて連載されていた。
内容は３０年前（１９９０年頃の制作局次長時代）に岸井成格さんが福島清さんの職場に来られて「親父は昔、東京日日新聞の印刷部長だった。参考になるかも知れないからと言って、追悼・遺稿集「岸井寿郎」（きしい・としろう）をくださいました。友人たち１４人の追悼の言葉に加えて、慶子夫人の３６ページもの「夫を偲んで」、そして遺稿４編などが掲載されていますと紹介されていた。
また、福島清さんの随筆によりますと「大正から昭和の激動の時代に立ち向かった寿郎さんの姿勢は、岸井成格さんに受け継がれていると同時に今の社会に対する警鐘のよう思います」とありました。
岸井寿郎さんは私の故郷・香川県観音寺市の出身で、母校（香川県立観音寺第一高等学校、旧制三豊中学）の大先輩にあたることから、福島清さんが随筆で紹介された記事を、大いに関心をもって読ませて頂いた。
その後、岸井寿郎さんの追悼集の話を、岸井家の子孫で故郷にある岸井家ご先祖様の墓守をしている同窓生・岸井清純君に、その追悼・遺稿集の話をしたら、その本なら我が家にもあるよとの話になった。
そこで、その本を借りて読ませて頂きましたが、３０数年前の本ですのでかなり色褪せており、縦書き活字も小さく読みづらかった。そこで、全頁をパソコンに接続しているスキャナーで画像として織り込み、OCRソフトを使って電子ファイル化しました。また、パソコンやスマホでも読み易いように横書きに変換しましたので、全頁をPDFで紹介させて頂きます。
岸井寿郎さんの略歴は、遺稿集の末尾に簡単に記載されておりますが、追悼文に書かれていることや、地元の旧常盤村常盤誌、Web情報などによりまとめました。
岸井寿郎（きしいとしろう。故郷では「じゅうろう」さん、と呼ばれていたようです）は１８９１年（明治２４年）５月２８日、香川県豊田郡常磐村（現観音寺市村黒町）で藍玉製造業と全国に販売をしていた豪商家に生まれ。香川県立三豊中学（現観音寺第一高等学校）、第三高等学校（京都）を経て、１９１７年東京帝国大学法学部英法科卒、司法官試補を経て、１９１９年（大正８年）１１月に大阪毎日新聞に入社して、東京日日新聞社（当時大阪毎日新聞社社長・本山彦一が社長）に勤務。１９３０年政治部長兼印刷部長を務めた後、１９３７年退社して実業界へ。１９４２年香川２区から衆議院議員となり、１９４５年１２月まで一期を務める。以後再び実業界へ。戦後は日本デリス社長、協和鉱業社長、中央広告通信会長を歴任。１９７０（昭和４５年）年１０月１日、７９歳で永眠。
先妻が病死後、再々婚された慶子夫人との間には成格さん（三男）と巍次さん（四男）の二人の息子さんに恵まれた。岸井成格さんは平成21年発行の観音寺第一高等学校東京支部同窓会誌「燧34号」の特別企画の鼎談に父の名代として出席されている。
1932年（昭和７年）４月19日から５月10日かけて大阪毎日新聞と東京日日新聞に『連盟を脱退すべし』を連載し国際連盟の無益有害なることを強調し「世界は今渦の如くわき立っている、国内的に、国際的に、目まぐるしく流転を始めている日本」と二本の論文を発表されたとある。
毎日新聞社在歴１９年であったにもかかわらず、在任中に社命を受けて洋行する際、本山彦一社長自ら横浜の港まで見送りに来ていただいたことなどが記されている。また、亡くなった昭和４５年には、当時の毎日新聞社の田中香苗社長が葬儀委員長となり、故人をお見送りされた他、追悼文を寄稿されるなど破格の扱いを受けていたことが記されている。
その他、毎日新聞社社史には記述の無い事柄も沢山掲載されている。
先ず、全体の概要を紹介するにあたり目次を紹介。
目 次
信念と情熱の人 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 高見 三郎 (7)
畏友、岸井君との半世記 ・・・・・・・・・・・・・・・・山下 芳允 (8)
岸井さんの追憶 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 新井 達夫 (12)
岸井さんの眼 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 渡瀬 亮輔 (13)
岸井さんは語る ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 岡田 益吉 (15)
私との出合いは「おっかない大先輩」・・・・・・・・・・ 横山信二郎 (25)
『出合いの話』・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・ 岸井 敏 (27)
三十年目の訃報 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中村 武 (29)
回想三豊中学 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中井 虎男 (30)
在校生からの手紙・・・・・・・・・・・・・・・・・常磐小学校生徒 (31)
夫を偲んで ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 岸井 慶子 (32)
遺 稿 集
久富氏の死 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (64)
正力松太郎氏との秘話 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ (67)
知友の死に思う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (72)
日記より ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (75)
岸井氏を悼む
勇気ある新聞人・・・・・・・・・・・・・・・田中 香苗 (81)
楽しく遊んだ幼少・・・・・・・・・・・・・ 麻生 良方 (81)
<東京ポスト>の名付親 ・・・ ・・・・・・・ 岩田 富美 (82)
歎 徳 文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 僧正 隆瑜 (84)
弔 辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 田中 香苗 (85)
賀屋 興宣 (87)
松田伊三雄 (88)
麻生 良方 (89)
河野 密 (91)
樋口 愛子 (92)
弔 詞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 高橋誠一郎 (94)
堀切善次郎 (94)
ご芳志を賜った方々・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (95)
ご 供 花・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (97)
※ ご家族の写真など・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ (99)
左写真「三男成格君（慶応高校時代）の英語スピーチ優勝を記念して」（原文の説明）
右写真「大井の自宅にて 左から三男成格君、四男巍次君、慶子夫人」（原文の説明）
全体については「岸井成格さんの父・寿郎さん」（PDF）のリンクを開いてご覧ください。
また、原本のPDFは49MBとDATA容量が大きいので、One Driveに保存しています。
ご覧希望の方は「原本のPDF」をクリックしてダウンロードしてから開いて下さい。
＜目次の注釈＞
当時の文部大臣の追悼文。岸井さん親子二代の文部省担当も珍らしい。
6歳年上の元報知新聞記者の追悼文。温情検事、ケンカ寿郎、ハシゴ酒、日本一キレイな紙面と首切。
元政治部部員で先輩の中で最も尊敬している一人
願望の神戸支局記者から念願の政治部へ。元毎日放送相談役。
元東京日日新聞政治部員の追悼文。東京日日新聞入社事情。山本(権兵衛)内閣成立のスクープ、印刷部の根本改正。外紙を排して国産品主義をとる、国際連盟脱退論、城戸事件の真相。正力松太郎傷害事件。太平洋石油会社創立、麻生久氏と自由党。
同郷の先輩で毎日新聞社入社時に寿郎さんにお世話になった。毎日新聞社社友。
叔父の岸井寿郎さん追悼文。東海ルーテル聖書学院々長。
東京地方裁判所勤務の司法官試補となった際、同僚の岸井君を知り
旧制三豊中学で教鞭を執りながら高等数学の研究者。著書に「非ユークリット幾何学」
10）在校生からの手紙・・・・・・・・・・・・・・常盤小学校（明治36年卒） 31頁
郷里の小学校の子供たちに「新聞社の写真ニュース」を送り続けていたようだ。
11）夫を偲んで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・岸井慶子 32〜63頁
岸井寿郎さんの最初の奥さんは病気で死去。２人の男児が成人した後、再婚した夫人も昭和１７年に出産のため入院した時、亡くなりました。昭和１８年４月に再々婚された慶子夫人との間に、成格（三男）さんと巍次（四男）が生れました。３６ページにものぼる慶子夫人の「夫を偲んで」は、隣人だった東条英機（当時首相）との人間関係や激動の時代に寿郎さんがどのように生き抜いたかを（１）〜（７）分けて詳細に書かれています。また、家族の写真など１１枚が掲載されています。
遺 稿 集・・・・・・・・・・・・・・・岸井寿郎
１）久富氏の死・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64〜66頁
政治部長時代に副部長として最も信頼をおいていた久富さんへの追悼文
２）正力松太郎氏との秘話 (1)と（2）・・・・・・・・・・・・・・・・67〜71頁
読売新聞の正力さんも岸井寿郎さんには一目置いていたようだ。
３）知友の死に思う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・72〜74頁
４）日記より・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75〜80頁
岸 井 氏 を 悼 む
＜東京ポスト＞昭和46年10月3日付けより転載
１）勇気ある新聞人・・・・・・・・・・・・・・田中香苗（毎日新聞社 会長） 81頁
筆者の入社当時（1965年）は田中香苗社長（香川県の東讃岐出身）だった。
２）楽しく遊んだ幼少・・・・・・・・・・・・・・・ 麻生良方氏（衆院議員） 82頁
三高時代からの無二の朋友・麻生久は毎日新聞に入社したが・・
３）＜東京ポスト＞の名付親・・・・・・・・岩田富美（東京ポスト社長） 83〜84頁
歎 徳 文 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 85〜86頁内容はPDFをご覧ください。
昭和四十六年十月九日 伝灯大阿闍梨 引導法印 海賞山主 僧正隆瑜 敬白
弔 辞
１）田中 香苗 （毎日新聞社 取締役会長 主筆） ・・・・・・・・・・・・ 87〜88頁
２）賀屋 興宣 (衆議院議員 ·友人総代) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89頁
３）松田 伊三郎 （株式会社三越 取締役社長）・・・・・・・・・・・・・・・90頁
※松田伊三郎さんは旧制三豊中学（現観音寺第一高等学校）同窓生
４）麻生 良方 （衆議院議員）・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91〜92頁
※三高（京都）、東京大学時代の同級生・麻生久さん（東京日日新聞記者）の息子さん。
５）河野 蜜 （後学々人 衆議院議員）・・・・・・・・・・・・・・・・・・93頁
６）樋口 愛子（社会教育廊会常務理事、白梅学園短期大学学長) ・・・・・・・94〜95頁
弔 詞
１）財団法人 交 詢 社 理事長 高橋 誠 一 郎 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 96頁
２）社団法人 日本俱楽部 会長 掘切 善次郎・・・・・・・・・・・・・・・ 96頁
ご芳志を賜った方々・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97〜98頁
衆院議長・船田中 同副議長・荒船清十郎 內閣官房長官・竹下登 自民党幹事長.保利茂・衆院事務総長・千野虎雄 文部大臣・高見三郎 総理府総務長官・山中貞則 社会党委員長・成田知己 衆院議員・賀屋興宣 同・大平正芳 同・坊秀男 同・麻生良方 同・坂田道太 同・中村庸一郎 同・福永一臣 同・渡辺栄一(文部政務次官) 同・河野密 同・古川丈吉 同・村上信二郎 参院議員・木內四郎 同・迫水久常 元参院議員・黒川武雄 同・棚橋小虎 元運輸大臣・楢橋渡 元衆院議員・浜田尚友 同・中谷武世 香川県知事・金子正則 観音寺市長・西原理一 文部省官房長・井內慶次郎 同総務課長・柳川覚治 同大臣秘書官・西山清 同・久保庭伸一 内閣調查室 (前熊本県警本部長)・寺田馨 首相官邸記者クラブ 文部省記者会
読売新聞社長・務台光雄 大阪読売新聞社長・八反田角一郎 信濃毎日新聞社長・小坂武雄 RKB毎日放送・社長・小林幸三郎 共同通信社開発局代表取締役・成田安賢 名古屋放送専務取締役・西元利盛 毎日広告社長・岩下秀三郎 毎日放送相談役・渡瀬亮輔 三越社長・松田伊三雄 ・・・・・ その他多数、PDFを参照下さい。
ご 供 花・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 99頁
毎日新聞社会長 田中 香苗、読売新聞社長 務台 光雄、大阪読売新聞社長 八反田角一郎
日本経済新聞社、北海道新聞社 、西日本新聞社、四国新聞社 、
共同通信社開発局代表取締役 成田 安賢、共同通信フォトサービス代表取締役 田中 清市、
衆議院議員 賀屋 興宣、自民党幹事長 保利 茂 、 衆議院議員 麻生 良方、衆議院議員 坂田 道太、
衆議院議員 坊 秀男、文部大臣 高見 三郎 、 衆議院議員 河野 密、衆議院議員 大平 正芳 、
伊藤忠商事社長 越後 正一、東洋工業社長 松田 耕平、 呉羽化学工業社長 荒木 三郎、
大日本印刷社長 北島 織衛 、トヨーサッシ社長 潮田健次郎、東新紙業社長 石井 智 、
東日印刷社長 和田 準一、塚本総業社長 塚本 素山 、 三越社長 松田伊三雄、
その他多数、PDFを参照ください。
（元制作局 通信システム部 小野喬啓）
＜参 考＞
平成24年に同窓生の岸井清純君から手紙を預かって、岸井成格さんに届けたところ、岸井成格さんから丁重な葉書を頂いた。
(元通信システム部、小野 喬啓）
