2022.06.05
先輩後輩
毎日新聞を2018年春に退職し、出版社を経て現在の介護事業所に転職して3年が経とうとしています。月に5回程度ある夜勤との兼ね合いもあって平日の休みが多く、妻を職場に、長男を学校に送り出してからの時間をどう使うかが課題でした。コロナ禍もあって、長らく外出を控えていましたが、2021年秋からは以前この欄でも紹介した都内の坂道散歩を開始。併せて週に2,3度の寄席通いも始めました。
朝のラッシュ時間が終わった頃に家を出て、10キロぐらい坂道を歩いてもお昼前。真っ直ぐ家に帰るのももったいないし、飲み始めるのも早すぎる。思い付いたのは寄席見物でした。東京には新宿、浅草、上野、池袋、三宅坂に五つの定席があり、通常はお昼頃から昼席、夕方から夜席があります。いつしか坂道歩きの後、昼席を見て帰宅し、夕食を準備するのが平日の休みの過ごし方として定着しました。
寄席との出会いは新聞記者になってすぐ。初任地の八王子で取材した地域落語会でした。小さなスナックで月に1回、若手落語家を招いていましたが、その落語会がスタートから何年目かの節目を迎えたという記事が地域面で初めてトップを飾った縁もあり、その後、新宿の方面回りに転勤してから寄席、ホール通いが始まりました。当時は古今亭志ん朝、立川談志、柳家小三治の全盛期でした。
その後、東京を離れて寄席からは遠退き、それ以来およそ20年ぶりの寄席通いになります。志ん朝、談志に続き、昨年、小三治も鬼籍に入られ、寄席の顔ぶれは随分変わりました。でも入船亭扇遊、柳家はん治、林家たい平など、かつて地域寄席で見た二つ目時代の若手が50歳代から60歳代の実力派となり、現在の落語界を背負っていることが何より頼もしくうれしい。
この春は落語協会で複数の女性真打ちが誕生しました。中でも注目株は蝶花楼桃花。春風亭小朝に入門する前にAKB48のオーディションを受け最終審査まで残ったという変わり種で、いまや独演会のチケットが最も取れない人気者です。昭和、平成のヒット曲を高座で披露するなど奔放な芸風には賛否両論あるけれど、そんな若手の成長を見守るのも楽しい。
面白ければ笑う。つまらなかったら眠る。都心にありながら「三密」とは程遠い客席で、贅沢な時間を楽しめるのも平日の寄席の楽しみ方。実力派からニューウェーブ、そして奇術、音曲、紙切りなどの色物まで、オムニバスで楽しめる寄席に出掛けてみてはいかがでしょう。
(元大阪本社運動部長、北村 弘一)
=東京毎友会のホームページから2022年5月27日
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