2022.01.14
先輩後輩
地方出身の私がこう切り出すのは憚られるのですが、東京は坂の街です。都心のうち、山の手と呼ばれるエリアは、武蔵野から伸びる舌状台地の先端にあたり、台地の間には石神井川、小石川、神田川、目黒川といった谷がある。これだけ小刻みな谷がある土地に、江戸時代以降、世界でも屈指の大都市を築き上げたわけだから、無数の坂があるわけです。
毎日新聞社を退職した2018年春に大阪から東京・世田谷に転居しましたが、その後のコロナ禍もあり、休日などに都心に出かけるのは控えてきました。この間に、タモリさんの名著「タモリのTOKYO坂道美学入門」(2004年)をはじめ、日本坂道学会会長の山野勝さんの「江戸の坂」(2006年)を読み、東京の坂道に対する愛情を膨らませてきました。
コロナ禍が一時収まった2021年11月に思い立って地下鉄赤坂駅から六本木、麻布十番方面に歩いてみると、勝海舟の旧宅があった本氷川坂、忠臣蔵「南部坂雪の別れ」の舞台の南部坂、六本木一丁目あたりの高層ビルに残された道源寺坂に出会い、その魅力に取りつかれました。
現在の介護の仕事は平日の休みが多いこともあり、家族を仕事や学校に送り出してから、文京、港、新宿、渋谷、目黒区あたりの坂道を一度に10キロあたり歩いています。年末からはフェイスブックで「東京坂道散歩」のお題で公開を始めました。
東京という街はとかく大規模開発などの変貌がクローズアップされがちですが、実は幹線道路から少し内側に入ってみただけで、古地図そのままの区割り、史跡・名跡が温存されていることに気づかされます。坂道歩きの醍醐味はまさにここにあります。
ちなみにこれまでに歩いた坂道の個人的なベスト3は、西郷従道旧邸があった西郷山近くで、坂上の庚申塔が趣深い別所坂(目黒区)、ロシア大使館西側から麻布十番方面に下っていく狸穴坂(港区)、TBS裏手にあり、雷電為右衛門の墓がある報土寺の築地塀が美しい三分坂(港区)。
タモリさんによると、坂道の鑑賞ポイントは(1)勾配の度合い(2)湾曲の仕方(3)周囲の江戸の風情(4)名前の由緒・由来――だとか。個人的には、武家屋敷など往年の様子を想像できる、視界が開けていて遠くまで見渡せる、坂も大好きで、いつか自分なりの尺度を作っていきたいな、などとも考えています。
※北村弘一(きたむら・こういち)さん 1988年入社。東京社会部、浦和支局、東京運動部、秋田支局次長、北海道報道部副部長、鳥取支局長などを経て、大阪運動部長、大阪編集局編集委員。2018年選択定年退職。現在は介護の国家資格取得に向け、都内の施設に勤務。滋賀県出身、57歳。
北村弘一さんのフェイスブック
https://www.facebook.com/profile.php?id=100001984002949
=東京毎友会のホームページから2022年1月7日
(トップページ→元気で~す)
https://www.maiyukai.com/genki#20220107
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