2021.10.07
先輩後輩
写真「防護服超しの再会」が2021年度日本新聞協会賞——と10月7日朝刊1面にあった。どこかで見た写真だと思ったら、スマホに残っていた。昨年暮れの日本橋三越本店で開かれた報道写真展で撮ったのだ。
「『ぬくもりは届く』~新型コロナ 防護服越しの再会~」
「宇宙服のような防護服の一見ユーモラスな構図の中に、触れ合いを求める人々の切実な願いを写し出した。コロナ禍が続いた1年を象徴し、読者の大きな共感を呼んだ」と日本新聞協会。毎日新聞の受賞は6年連続33件目で最多記録である。
中面の特集で、撮影した貝塚太一記者(44歳)=北海道報道部写真グループ=が撮影の経緯を明かしている。
——2020年。北海道は全国でいち早く新型コロナの感染が拡大した。休校や外出自粛で閑散とする繁華街、マスクを買い求める人たち、変わっていく生活スタイル……。見えないウイルスと闘う今を、写真でどう表現できるか。
9月中旬、東京本社写真映像報道センターの竹内紀臣(きみ)記者から「空気感染や飛沫感染を防ぐ新しい防護服の初納入が、札幌の老人ホームになる予定です」と連絡があった。竹内記者はテレビ番組で大型テントなどを製造する大阪の企業が宇宙服のような防護服の開発を進めているのを知り、土曜日夕刊の1面写真企画「読む写真」の題材にならないかと交渉していた。
一方の私は、北海道内で「会えない家族」をテーマにした写真を撮りたいと医療機関や葬儀社に掛け合っていたが、難航していた。竹内記者がコロナ禍で東京から移動しづらかったこともあり、私が引き継ぐ形になった。
メーカーや購入した介護付き有料老人ホームの了承を取り付け、約1カ月後の10月29日、施設を訪れた。部屋に入る前、同行取材を許可してくれた箕浦尚美さん(63)から、入居する母の中島万里子さん(90)のことを聞かせてもらった。
貝塚記者は続ける。——部屋に入った瞬間、箕浦さんは両手を広げて駆け寄り、母を抱き締めた。衝動的に「抱き合う」という場面は見たことがなかった。
「一枚の写真で世界を変えたい」。教師志望だった私は大学4年生の時、ある写真展で戦時下の国の子どもを撮った写真に衝撃を受け、報道カメラマンを志した。あれから20年になる。
おめでとう、貝塚記者。
(堤 哲)
=東京毎友会のホームページから2021年10月7日
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