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新刊紹介 世界を巡る阿部菜穂子「サクラ大使」=東京毎友会のHPから

2020.03.07

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イタリア語版

 ロンドン在住の元毎日新聞記者阿部菜穂子さん(81年入社、社会部、政治部、外信部に在籍)著『チェリー・イングラム 日本の桜を救ったイギリス人』(2016年3月岩波書店刊)が英米に続いて2020年3月にイタリア、ドイツ、オランダで次々に出版される。スペイン語とポーランド語が今秋、さらに中国語への翻訳も進行中だ。

 阿部さん、というより菜穂子さんは、イタリア語版の出版に合わせて、フィレンツェで開かれるブックフェアで講演会を開く予定だったが、北イタリアでのコロナウィルスの感染騒動で延期された。

 しかし、オランダ語版の宣伝イベントは予定通りで、3月下旬にアムステルダムへ。そのあと米国ワシントンへ飛ぶ。4月12日まで開催のポトマック河畔「桜祭り」に参加する。

 

ドイツ語版

「各州の桜女王が集まったパーティだとかパレード、和太鼓などの野外演奏などが大々的に行われるのですが、オープニングでスピ―チを頼まれています」 さらに「英国でも3-5月は桜フェスティバルや桜の植樹セレモニーなどが多数あり、いくつか呼ばれています。なんだか本の反響が予想以上に大きくて、まるで「チェリー・ブロッサム大使」にでもなったかのようで、びっくりしています。桜の季節が終われば落ち着くと思うのですが……」とメールで伝えてきた。

 『チェリー・イングラム』は、2016年の第64回日本エッセイストクラブ賞に選ばれた。菜穂子さんは、英国版の出版に3年掛けて再取材して、全面的に書き直した。

 桜の本家・日本では江戸時代には250種もの栽培品種が生まれたが、明治維新で荒廃。もっぱらソメイヨシノが植樹された。

 

アメリカ・ペーパーバック版

 《大戦中に「散る桜」が軍部によって強調され、神風特攻隊員らが側面に桜の花の描かれた特攻機で「桜のように散る」ことを強要された事実は、西欧社会ではまったく知られておらず、特別に興味を持たれた》と菜穂子さんはいう。(日本英語交流連盟のサイトhttps://www.esuj.gr.jp/jitow/586_index_detail.php#japaneseより)

 「日本の桜を救ったイギリス人」コリングウッド・イングラム(1880-1981)は、訪日した際に多種多様な桜を持ち帰った。英国ケント州・ベネンドン村のイングラム邸の庭園では130種類もの桜が咲き誇る。

 このイングラムの桜園から、日本で絶滅した白い大輪の花をつける「太白」(たいはく)が、里帰りしている。

 《1920年代後半の日本に、「多様性を大切に」と警告を出したイングラム。100年近くも前のそのメッセージは、現代でも十分に重みをもつ。多様な桜を大切にする社会は、住人たちの異なるものの見方も尊重するであろう。社会がいつの間にか偏狭なナショナリズムに覆われてしまわないように、イングラムのメッセージをもう一度、しっかりと受け止める必要があるように思う》と、菜穂子さんは訴えている(同上の日本英語交流連盟サイトより)。

イギリス版ペーパーバック
イギリス版
日本語版

  菜穂子さんのHPは www.naokoabe.com

(堤 哲)=東京毎友会のホームページから2020年3月1日

(東京毎友会→トピックス)

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