閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

健康麻雀の楽しみ(山梨 博)

2019.04.02

閑・感・観~寄稿コーナー~

 「賭けない、吸わない、飲まない」をキャッチフレーズにしている「健康麻雀」を週1回楽しんでいる。フレーズの意味はカネを賭けない、タバコを吸わない、アルコールを飲まない。そこから健康にもよさそうと名づけられたようだが、じつは最近、麻雀は認知症予防に効果的として見直されているといい、とりわけこの健康麻雀に注目が集っているらしいのだ。

 始めたきっかけは、私の住む西神戸の自治会会報に昨秋載った老人会の健康麻雀参加者募集の呼びかけ。2年前の夏までフルタイムで働いた後、月数回の会社通いのほかは暇な時間がたっぷりできた私は、大の麻雀好き。というか、大学時代、麻雀にのめり込み、勉学も中途半端に終った親泣かせの学生だった。結局、大学に7年間も通い、毎日新聞に拾ってもらうことになったわけだが、入社して再び麻雀の洗礼を受けた。記者クラブでの麻雀こそあまり参加しなかったものの、初任地の鳥取支局、次の京都支局、さらに奈良支局や姫路支局など主に地方機関で「事件待機も兼ねて」を理由にそれこそ連日のように卓を囲んだ。

 およそ15年ぶりにパイを握ることになった老人会の麻雀は、自治会の集会所で週1回午後、4時間ほど開設している。女性部会が先行開催されていたが、男性陣もという声が出て、私も男性部会に参加している。

 麻雀台は全自動タイプも広まっているが、使っているのは自治会員手作りの昔ながらの台。何しろ指先を使って1局ごとにパイを積むのが、認知症対策になるのだとか。

 ルールはひところのインフレ麻雀とは対極のデフレ麻雀。なきタンヤオも認めない「完全先ズケ」で、ドラも赤ウーピンなどもってのほかという最少限型。もっとも特徴的なのは点棒で、「3万点持ちの3万点返し」。つまりトップ賞がまったくないという珍しいルールで、親の時にでも上がらなければ、なかなか浮かないという、厳しい麻雀である。 スタート直後は1卓しか成立しないこともあったが、最近は常時、2卓ができている。参加者は70前後から80代後半までの自治会員。会社や役所などで長年、卓を囲んできたベテランが大半で、なかなかレベルは高い。私も最初こそ少し自信を持って臨んだが、次第にベテラン勢のペースに巻き込まれ、最近は負け続けている。そんな中で2月末、久しぶりに役満の四暗刻(スーアンコー)をツモ上がりし、溜飲を下げた。「賭けないと麻雀らしくない」と敬遠する人もいるようだが、マイペースの私は勝ち負けより手作りに勤しみ、けっこう楽しいと感じている。

 費用は部屋の使用料も含め1日200円。参加者も「賭けない、吸わない、飲まないルールを守っており、まずは和気藹々とパイを握っている。

 同じような健康麻雀は西神戸のニュータウンを中心に盛んに開催されているといい、老人会によっては常時5、6卓ができるという情報も伝わってきている。

 このギャンブル性の極端に少ない麻雀、どこまで普及するのかわからないが、今後、認知症予防に少しでも効果のあることが実証されたら、もっと広まる可能性はある。現に全国的な健康麻雀の協会(一般社団法人)もあるほか、関連本も出版されているとい
う。

 健康麻雀が隆盛するようになっても、もうボケてわからない、というのでは様にならない。せめてそうならないよう麻雀に勤しみたい、というのが今の心境である。(山梨 博)

(週に1回、健康麻雀)