2026.03.11
閑・感・観~寄稿コーナー~
これまでにも少し触れましたが、私は今、社員5人という小さな日系の会社で、マレーシア在住日本人向けに、現地のニュースを翻訳して配信するという仕事をしています。
そもそもの現地のニュース事情ですが、当然マレー語がメインではあるのですが、英語、中国語のニュースサイトも数多くあります。また私は経済ニュースを主に扱っているので、よく確認するのがマレーシア証券取引所(ブルサ・マレーシア)のウェブサイト。日本と比べ、比較的少額の取引でも企業に公表を義務づけており、基本は英語での報告です。また国が発表する貿易額など統計データも、マレー語、英語で併記されています。ちなみにほかの日系のニュース会社としては、共同通信系列のNNAなどがあります。

私は英語のニュースの中から1日5~6つを選び、日本語にリライトするのですが、同じテーマでもニュースサイトにより書き方が違うこともあり、できるだけ複数の媒体に目を通し、理解を深めるようにしています。
それだけの本数のニュースを読むとなると、機械翻訳も当然使います。機械翻訳の精度も向上しているので、正直、ざっと内容を把握するだけなら私がリライトをする必要はないのかもしれませんが、そこからが元新聞記者の腕の見せどころです。
まず、こちらのニュースの特徴として、最初に5W1Hが書かれていないことがよくあります。特に日付は、「今日」「昨日」と表記されていることがほとんどで、配信日などと照らして確認する必要があります。また、企業名だけでなく、どんな事業をやっている会社かの一言説明を最初に付け加えたり、原文に書かれていない情報も、マレーシア在住歴が浅い人でも理解しやすいように、簡潔に補足したりを心掛けています。
とはいえ、私もまだまだマレーシアに詳しいわけではないので、最近はもっぱら人工知能(AI)の力を借ります。ただ、AIが必ず正しいとは限らないため、裏取りは欠かせず、翻訳というより、リサーチが仕事のようにも感じます。2023年を「生成AI元年」というようですが、この数年でニュースの書き方なども急速に変わってきているのを実感します。
一方、AIでもまだしばらくは難しいだろうなと思うのは、ニュースを選ぶ作業です。私ともう一人で作業をして1日13本を配信しているのですが、日系企業の関連ニュースだけでは埋まらないし、単純にマレーシアのトップニュースでも、例えば細かい政治動向など、日本人にはあまり関係ないこともよくあります。また経済ニュースでなく、マレーシアの生活により密着したニュースを選ぶとなると、トピックも多少変わってくるでしょう。AI向けプロンプト(指示)を変えて試したりもしていますが、現状は人が選ぶ方が的確なものが選べていると思います。
思えば、インターネットがなく海外で日本のニュースを入手するのが困難だった時代から、今やどこにいてもリアルタイムで世界各地のニュースが見える時代へと変化してきました。さらにSNSを通じ個々が自由に情報を発信できます。そんな情報過多の時代だからこそ、ニュースをどう取捨選択し、伝えていくべきか。
例えば、今回のアメリカ・イスラエルのイラン攻撃に関しても、イスラム国であり石油産出国でもあるマレーシアでの報道は、日本での報道とは異なる見方が多いです。
マレーシアに来て何回かの転職を経て、またニュースにかかわる仕事に就いたのは、不思議な巡り合わせです。新聞社時代の経験を生かしながら、新たな視点も取り入れつつ、もうしばらくニュースと向き合っていきたいと思っています。
(元広告局、大道寺峰子)