2025.11.01
閑・感・観~寄稿コーナー~
8月から9月はいたるところでマレーシア国旗を見かける季節です。マレーシアの国旗は遠目から見ると、アメリカの星条旗にとても似ているのですが、赤と白の14本の横縞に左上にイスラム国家の象徴、月と星が描かれています。14本の縞は、マレーシアの13州と、直轄領(実際に3つありますが、縞としては1つ)を表しています。

国旗は8月31日の独立記念日と、9月16日のマレーシアデーを祝うために掲揚されます。この2つの日の違いは、1957年にイギリスからマラヤ連邦として独立したのが8月31日。その後1963年にボルネオ半島のサバ州、サラワク州が加わったの日を記念してマレーシアデーができました。
マレーシアは、日本と同様に議会制民主主義(立憲君主制)ですが、連邦制です。特に後から加わったサバ州、サワラク州は他州より強い自治権が認められており、マレーシア国民でも旅行する際には入国審査があるほどです。

また前回も書いたようにマレーシアは多民族国家です。首都クアラルンプールは植民地時代の錫産業から発展した街で、錫を掘るために中華系移民が多く来て、その後、ゴム農園のためにインドから多くの人がやって来たといわれています。そんな歴史的な背景から、国としての”団結”を象徴するために国旗は欠かせないものになっているようです。
そして、国旗のシーズンが終わり10月に入ると目につくのが、インド系のディーパバリ(もしくはディワリ)というお祭りの飾りつけ。「コラム」という砂絵(米の時もあり)がショッピングモールなどの入り口に描かれます。「光の祭典」ともいわれるお祭りなのですが、インド系のお正月という意味合いがあるそうです。
マレーシアではこのディーパバリのほか、いわゆる1月1日と、チャイニーズニューイヤー、イスラム教の断食明けを祝うハリラヤの年4回”お正月”を祝うといわれています。ディーパバリもハリラヤも太陰暦だったり、イスラム暦だったりで、年ごとに変動するので、マレーシアのカレンダーは大変です。マレーシアに四季はありませんが、こうした行事でシーズンを感じることができます。

あとユニークなのは、13州のうち9州に王様(スルタン)がいて、その9州の王様が、5年ごとに順番に国の王様になるという制度がとられています。王様によって、1回も回ってこないこともあれば、2回回ってくることもあるんだとか。州同士が対立することなく、よく考えられた制度という気がします。
加えて、私がマレーシアの国民性を感じるものの一つがマレー語です。マレー語はアルファベットで表記されることが多く、東南アジアの多くの国のように独自の文字を持ちません。古くからのジャウィ文字という表記法もあるのですが、これはアラビア文字に由来しているそうです。つまり、もともとあったマレー語を、ともに外国から来たアラビア文字で表すか、アルファベットで表すかという違い。その時代ごとに外からの文化を、自分たちのオリジナルの文化に柔軟に組み合わせてきた象徴のような気がします。
基本的に多民族が仲良く暮らす国マレーシア。政治的には、マレー系の人を優遇する「ブミプトラ政策」が長年採られており、経済力のある中華系の人などからの不満は根強くあるようですが、それでも、マラッカ海峡という立地から交易で栄えてきた国ならではの知恵を強く感じています。
(元広告局、大道寺 峰子)
※この連載は随時連載します。