閑・感・観~寄稿コーナー~
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CQ CQ・・ハム三昧の毎日〈中出 眞澄〉

2024.12.10

閑・感・観~寄稿コーナー~

 阪神大震災の翌年・1996年に繰り上げ定年退職してから28年。縁あって続けていた大学広報誌のお手伝いも2019年に契約が満了。まったくのフリーになった今は、趣味を通り越して道楽ともいえるハム(アマチュア無線)三昧の毎日を過ごしています。

 ハム歴は、高校2年の時から始めたので60年を超えました。よく飽きもせず続いたものです。おかげでフリーとなっても退屈することがありません。

アンテナとタワー・・アンテナは今年新調しました。
ムセン室・・私のお城です

◆モールスでボケ防止
 ハムの楽しみ方は人により様々です。マイクを握って会話を楽しむ人もあれば、プロの通信の世界では化石になったモールスによる交信を楽しむ人もいます。また、Digital時代を反映してコンピュータを駆使するデータ通信も盛んになっています。
 しかし、私は開局以来一貫してモールス信号による交信をメインにして、ハムを楽しんできました。長点と短点を組み合わせたモールス信号、いわゆる「ツートツート」による交信は手指と脳の働きが鈍ると不可能ですから、逆にボケ防止のための格好の訓練になっていると思います。

複数のキーを使い分けます。博物館ができるほど集めている人も

◆交信証は昆陽池をデザイン
 交信すると相手局とQSLカード(交信証)を交換します。私のカードは自宅から歩いて数分、ウォーキング・コースになっている昆陽池を空撮した写真を使っています。実は、半世紀ほど前のことなので時効だと思いますが、大阪(伊丹)空港から飛び立ったヘリから本社カメラマンに撮ってもらった写真なのです。中の島の日本列島は一時は鵜に食われて枯れたこともありましたが、この写真は綺麗な緑を保っています。池の姿は少し変わっていますが、デザインは入れ替えずにずっとカードに使っているお気に入りです。

昆陽池をあしらったQSLカード(交信証)

◆世界のハムと交信
 世界にはざっと200の国があります。加えてハムの世界では本土から一定の距離のある島は別の国として数えるのです。例えば日本の場合、小笠原と南鳥島は別の国とカウントします。
 現在ハムの世界には340の国が存在しますが、私は325まで交信済みなので、残っている国は15ということになります。残った国はほとんどが無人島ですから、物好きな(笑い)ハムが行ってくれないと交信できません。ところが、世界中から寄付を募って数千万円をかけ、時には危険を冒してでも絶海の孤島に出かけるハムたちがいるのです。でも、残りの人生で全ての国と交信するのは多分私には無理でしょう。

◆海外へ無銭ならぬ無線旅行
 2000年代に入り、関西のハム仲間でチームを組んで、毎年のように海外に出かけて電波を出すようになりました。日本はアメリカや中国と並んでハム大国ともいわれるほどハムの多い国。仲間内では「雑魚」と呼ばれますが、日本からと違ってハムの少ない海外の島などから電波を出すと、世界中のハムから呼ばれます。この快感は何とも言えません。

 表はこれまで行ったところです。絶海の孤島こそありませんが、ハムに興味のない方から見ると「どこなの?」というところが結構あると思います。一番遠かったのはモアイで有名なイースター島で、片道50時間の旅でした。観光だけなら気楽ですが、時には無線機やアンテナをかついでの移動ですから、大変です。

海外運用で発行した交信証

◆高齢者集団、最後の遠征
 2025年1月、南米ベネズエラ沖のオランダ領ABC諸島の一つ、ボネール(Bonaire)に私の妻も含むハム仲間6人で無線旅行に出かけます。平均年齢79歳の超(?)後期高齢者集団。恐らく最後の遠征となるでしょう。

◆XYLに感謝
 ハム用語で妻のことをXYL(ex-Young Lady)と言います。私のXYLは一応ハムの資格とコールサインを持っていますが、ペーパー・ライセンスです。ですが、海外旅行が大好きで、無銭ならぬ無線旅行でもスリランカやカンボジアなど世界遺産のあるところには付き合ってくれ、少しだけハムも運用します。元気の源ということで、ぐっと我慢しているのかもしれませんが、亭主の道楽を黙認してくれている彼女には大変感謝しています。

                            〈元経済部、中出 眞澄〉