閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

スポーツ吹矢のススメ(西郷 新一)

2024.11.30

閑・感・観~寄稿コーナー~

 「脳の老化防止」「ぜんそく、肩こり、冷え性の改善」「動脈硬化、心筋梗塞の予防」「便秘改善」「パーキンソン病予防」—–近所のご夫婦の紹介で愚妻と共にスポーツ吹矢を始めた時、もらった教則本には、吹矢で用いる腹式呼吸の健康効果として20項目余りが並んでいた。

 それから約五年、月に二、三回の合同練習への参加とほぼ毎日の自宅での自主練習を続けているが、これらの効能を証明する兆候は、残念ながらほとんどない。ただ、これまで年に二、三回は引いていた鼻カゼを全く引かずに来たことくらいだが、それもここ数年の世間のコロナ対策を思えば、吹矢の効能とまでは言い切れない。

 にもかかわらず続けているのは、単純に「楽しい。面白い」からだ。10メートルの距離(実力と体力に応じて6m、8mも)に置いた床から1.6メートルの高さにある発泡スチロール製のマト(約30センチ四方)に矢を吹く。使うのは長さ120㎝のグラスファイバーの筒(内径1.3㎝=ほぼ水道管程度)。これに、先端に小さな金属製矢じりの付いた薄いプラスチックフィルム製の矢(重さ0.8㌘)をこめ、強く息を吹く。矢は時速100㌔で飛び、パシッと音を立ててマトに突き刺さる。文字にしてしまえばこれだけのことだが、発射から的中の瞬間までの爽快感は実に強い。古代人の狩猟本能につながるといっては大げさか・・。

狭い自宅ではマトまでの距離を取るのが一苦労。玄関の土間から吹くのだが、それでも9m50㎝がやっと。冬は寒さがこたえる。

 私は学生時代に弓道部に所属した。それに比べれば、吹矢は全てに渡って手軽、簡便だが、遠くの的に的中する際の心地よさには何の変りもない。また、矢をつがえてから発射までの動作が、呼吸も含めて正しくないと的中率に影響する点も、弓道と変わらない。正しい腹式呼吸と、筒と矢の口径が正しく管理されていることが的中向上要件のほぼ全てなのだ。

 その意味で、単純運動だが奥は深い。高齢者向きである。また、マトを含めた用具も、入門者セットが2~3万円。ランニングコストとしては練習場代やクラブ会費のほかは時折補充する矢の代金程度で、年金生活者としてはありがたい。

 と、ここまで読んで挑戦する意欲が芽生えた方は「日本スポーツウエルネス吹矢協会」のHP検索をお勧めする。詳しいルールに加えて全国支部の所在地もわかり、手近で仲間を探すことも可能。

 いずれ、どこかの試合会場でご同輩との手合わせが実現することを期待している。

                     (元事業本部、西郷 新一)