2024.11.15
閑・感・観~寄稿コーナー~
京都府の南部に位置する木津川市に移住し5年になります。引っ越しに当たって、あまり下調べすることなく住まいを決めたのですが、古都・京都と奈良に挟まれた自然豊かな一面と、「けいはんな学研都市」として大企業の研究施設をはじめ国立国会図書館、病院、スーパーマーケットなど社会インフラも整い、京都、奈良、大阪へのアクセスも良く、住みやすさに驚いています。
70歳を過ぎての新天地でのセカンド・ライフでした。いかに高齢期の生活を楽しいものにするか!を考えました。一般的に人生100歳時代の生き方として言われているのが、健康づくり、仲間づくり、生きがいづくりです。そのために先ずは「地域社会とどうつながるか」です。夫婦で話し合い「地域を知り、地域に溶け込もう」と、広報を頼りに情報を集め、積極的に様々なイベントに参加しました。
市内の廃校を会場で月一回開かれる「郷(さと)祭り」でのフリーマーケット出店、地場産業の「茶摘み体験と紅茶づくり」、「タケノコ掘り」、そして「柿の収穫体験」などです。どのイベントも豊かな自然の中での活動で、地域の人も優しく、交流できて楽しいものでした。
皆様ご存じの通り農業の現状は、高齢化が進み後継者難。田畑の維持管理に困って放置されているところも多く、柿園も同様でした。
「鹿背山(かせやま)の柿ネットワーク」が開催した収穫体験は、実りの秋に収穫の喜びを味わえ、夫婦で楽しめました。同ネットワークでは、収穫体験だけではなく剪定講習会、接ぎ木講習会などもあり、柿園の維持管理を手伝ってくれるボランティア会員を募っていました。
私たち夫婦は農業に関しては全く素人でしたが、①夫婦で参加できること②自分の都合の良い日だけの参加で良いこと③作業時間が一日3時間程度で体力的な負担が少ないこと④作業への参加、不参加の連絡をしなくても良いという気楽さが気に入り、自然の中で体を動かすことへのあこがれもあり、参加を決めました。
柿園は自宅から車で15分程度の鹿背山地区にあり、地元の人からは「鹿背山の柿」として親しまれ、昔から名産品として贈答用にも使われています。
私たちの柿ネットワークが管理する柿園には、約1000本の柿の木があり、品種は「西村早生」と「富有柿」。これらを会員約40人で育てています。
年の始まりの1月と2月は、剪定作業です。どの枝を切り、どの枝を残すか。樹形を考えながらの作業で寒風と闘いながら、頭も使うなかなか面白い作業です。春3月になれば雑草が密集し、草刈り機を使っての除草が随時始まります。4月には、周辺の竹藪整備もあり、楽しみは整備後の「タケノコ掘り」です。採れたタケノコはみんなで山分け、会員同士の交流BBQも4月に行われます。
5月からは摘蕾、摘果の作業に入ります。柿の実の蕾を手で摘んでいく「摘蕾」。1か月もすればこの蕾が直径約4~5センチの実に成長します。枝によりますが1枝に4~5個。多いのは7、8個も実がつきますが、その中で一番形が良く大きいのを1個だけ残し、残りは全部ハサミで切り落とします。少しもったいない気持ちになりますが、玉太りの良い、おいしい柿を育てるための作業です。
このころから毎月末に薬剤散布を行い、真夏の7、8月は数日間の薬剤散布と時たま草刈り作業程度で少し休めます。
そして9月下旬から楽しみな「西村早生」の収穫です。1日の収穫量は約100キロから130キロ。10月に入ると「富有柿」の収穫が始まります。色づきを見ながら脚立に上り1つ1つ丁寧の摘み取ります。選別は重さで3L、2L、L、M、S、SSと商品にならない等外の7段階に分け、大きさごとにコンテナケースに入れて計量、記録して収穫作業は終了。翌日に市役所近くで販売しています。
熟しすぎた柔らかい柿や傷が付くなどして商品として売れない等外品の柿は、会員への作業のご褒美として持ち帰れます。我が家でも食べきれずジャムlにしたり、熟した柿を冷凍し夏に柿シャーベットとして頂くことも。また、園内には珍しい品種の柿や渋柿もあり、我が家でも渋柿は、つるし柿にして賞味しています。
柿ネットの会費は年間2千円。作業中の事故に対するJAの損害保険(年間3000円)は個人負担。長靴、軍手、のこぎり、剪定ハサミなども個人持ちですが、作業時間、作業内容によって交通費程度は出るので、トータルで持ち出しなくトントンでボランティアが出来るようになっています。
今年は夏の猛暑に加え、サル、イノシシ、シカが柿園まで出没し柿を食い荒らし、さらにカメムシが大発生という三重苦で、収穫量も激減。農業経営の厳しさ、難しさを味わった一年になりました。
しかし、日々、行くところがあり、仲間がいて、わずかながらでも地域貢献、社会貢献ができている喜びが味わえることは、毎日の生活に張り合いが生まれ、心と体の健康になっていると思って楽しんでいます。
(元グループ推進本部、石田 康二)