閑・感・観~寄稿コーナー~
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85歳の手習い(桜井 一郎)

2023.12.18

閑・感・観~寄稿コーナー~

 令和5年4月から、自宅近くの習字教室に通い始めました。“85歳の手習い”です。

 サラリーマン家業を卒業してから約20年。碁会所とプール、そしてたまには呑み屋通いの毎日を続けてきましたが、やがて碁会所は閉店。プール通いも週2、3回しか身体がついて来なくなって、最近では外出する機会が少なくなるばかり。「認知症も恐ろしい」というのが、教室通いのきっかけです。

 レッスンは週1回。水曜日の午後1時スタートです。自転車で約10分のところに教室はあります。ツエ歩きの身ですから、教室通いも、もちろん自転車。雨の日は妻に車で送り迎えしてもらったり、レッスン日を変えてもらったり。

 先生は70歳を少し超えた女性です。子供は独立、夫にも先立たれ独り暮らし。物静かな人です。教室の生徒の大部分は子供たちで、大人は私を含め5、6人ほどらしい。レッスンが始まるのは、毎日午後3時からですが、私は特別扱いで午後1時からに、してもらいました。だから私のレッスンはいつも先生と1対1です。

 畳敷きの部屋に坐り机。いつも決まった席に坐り、いよいよスタートです。与えられた手本を左手に置き、すずりに墨汁を満たします。先生は少し離れた机の前に坐り、何か教室の事務仕事をしています。私が1枚書き上げるごとに、そばにやってきて「ここのとことは、こうですネ」などおとひと言、ふた言。また自分の机に戻って行きます。4、5回繰り返して、1時間ほどのレッスンは終了です。

 いまのところ、正直、自分でも満足できる字は書けません。思っていたより、ずっとむずかしいことがわかりました。「なんで、こんなこと始めたんやろ」と後悔したくなることもあります。誰に文句を言うこともできず、続ける覚悟です。毎週1日は、自宅で“予習”するなど気合いを入れ、9級からスターとした段級は4級に上がりました。

 私たちの年齢では、小学5、6年時に国語授業の一環として、月に1、2度、習字の時間があったように思います。私はそれ以来、習字の筆を手にした記憶はありません。エンピツやペンで書くことは案外好きなこと、毛筆で書かれた年賀状などをもらって感激することなども、“認知層防止”につながって、習字教室につながったのでしょう。いいつまで続くか自分でも楽しみです。

                          (元地方部、桜井 一郎)

自宅で自習