閑・感・観~寄稿コーナー~
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ランニングクラブの仲間と神戸マラソン、フルマラソン86回目を完走(小泉 健一)

2023.11.29

閑・感・観~寄稿コーナー~

 マラソンシーズンを迎えた。大津支局に勤務していた1995年、滋賀県で開かれた大会に後輩記者と参加し、初のフルマラソンを経験した。以来、コロナ禍で中止となった期間を除き、秋から翌春にかけ挑戦している。2023年11月19日は今季初となる神戸マラソンを走った。 

 今回は、大阪市の鶴見緑地公園で毎週木曜に練習会をしているランニングクラブの仲間と一緒だった。いずれも男性の77歳Tさんと、自分と同い年の66歳Oさん。Tさんは大会の1週間前から極度の体調不良が続き、Oさんは練習中に故障した腰痛が悪化して大会まで10日間まったく走れなかった。2人とも直前まで「とても完走できない」と出場をあきらめていた。 

 それをラン仲間の60代前半の男性Iさんが翻意させた。11月5日に淀川河川敷であった大会に出たIさんは、当日の最高気温が27度になった暑さもあり、30㌔過ぎで体力を消耗し走れなくなった。でもあきらめることなく、河川敷で横になって休憩を取りながら歩き続け、6時間14分かけフィニッシュした。3時間台で完走できるIさんにとっては自己最悪の記録。最後まであきらめなかった思いを知り、TさんもOさんも「行けるところまで頑張ってみる」と大会前日に神戸の出場を決めた。 

 当日は自分の調子も今ひとつで、目標記録に届きそうもなかったこともあり、最後の約5㌔はTさんに伴走した。元々Tさんはこの春の大会で3時間39分台を記録し、ランニング雑誌が発表する昨季の年齢別ランキングで全国2位の実力者。体調不良の影響で終盤はさすがにフラフラになったものの、「残りは鶴見緑地の2㌔練習コース2周分の距離だけ」「あの最後の上り坂を越えたら下りが待っている」「あと2㌔を過ぎた」「直線の先にゴールが見えている」との横からの励ましの声に応えて走り続け、手をつないでバンザイをしながら一緒に4時間20分でフィニッシュラインを超えた。完走は無理と思っていたTさんは「奇跡が起きた」と本当に満足そうに喜んだ。 

 3時間未満で30完走した実績のあるOさんは誕生日に迎えたレースだっただけに、フィニッシュしたら受け取れる日付入りのタオルがどうしても欲しいと、腰の痛みに耐えて望みをかなえ、6時間19分の自己ワースト記録で完走した。 

 新聞記事にはならない出来事かもしれない。でも、全力を出し切ってやり遂げたランニング仲間を身近にし、いろいろなことを教えてもらい、心を揺さぶられもした。会場入りから打ち上げまで、一緒に過ごせたことがありがたかった。 

 今季は12月の奈良、来年2月の愛媛、大阪を走る予定にしている。14回目となる愛媛では、松山支局時代の2007年から書道の指導を受けている毎日書道展審査会員の先生やお弟子さんが、墨書した大きな激励の横断幕を持ち、いつも松山市内の沿道で応援してくれる。本命レースとして記録を狙うため、これから練習の強度を上げていかなければならない。全力を尽くして走る姿だけは見せたい。 

 フルマラソンの完走は神戸で86回目。節目の100回は超えたい。走ることは趣味かと聞かれればちょっと違う。自分には生きることそのものだ。

                      (元京都支局、小泉 健一) 

神戸マラソンスタート前、Tさん(右)と
神戸マラソンのレース中に(右)