2023.01.14
閑・感・観~寄稿コーナー~
グループ印刷会社・高速オフセットのホームページ(HP)に、新聞の「歴史」をまとめたコラムと、新聞ができるまでの「工程」を紹介したコラムを書く機会を得ました。思った以上に検索されて読まれており、OBとしてお役に立てたと思っています。
私は2019年に退職し、毎日新聞も印刷している高速オフセットで、紙とウェブ両方のコンテンツ素材を作る制作本部を担当しています。印刷業界で「前工程」と呼ばれている部門です。版とインクで紙に印刷する部門が「後工程」と呼ばれるのに対し、「印刷する前段階」の工程という意味です。新聞社の編集局に似ています。西梅田の新聞ビル6階と堺工3階で、ディレクター、ライター、デザイナー、カメラマン、編集オペレーター、ウェブデザイナー、プログラマーなど計約100人が働いており、その人数に驚かれるかもしれません。
ある日、ホームページを担当する営業本部デジタル事業室の女性社員から「松田さんは新聞社に長くいたのだから、新聞の歴史や、工程を紹介するコラムを書いてもらえませんか」と依頼を受けたのが、執筆のきっかけです。
参考文献をひもときつつ、また堺工場の新聞印刷部を訪ねて改めて話を聞いたりして、新聞という自分の仕事人生を振り返る貴重な時間になりました。1984年に入社した時は、堂島の本社で鉛活字とCTSが並行していました。急いで直しをするのに、棚から活字をもらって活版場を走ったことや、インクのにおいをありありと思い出しました。
「新聞の歴史」https://www.kousoku-offset.co.jp/column-newspaper-history/
「新聞ができるまで~編集・刷版編」https://www.kousoku-offset.co.jp/column-newspapermade1/
「新聞ができるまで~印刷・搬出編」https://www.kousoku-offset.co.jp/column-newspapermade2/
以上の3本です。
「編集・刷版編」では毎日新聞大阪本社の協力を得ました。輪転機の仕組みや印刷工程をここまで詳しく説明しているのは珍しいらしく、教育関係からの閲覧も多く、コロナ禍にあって研修にも使われていると聞きました。デジタルの世の中にあって、新聞について調べようと検索する人が結構いることにも驚きました。ありがたいことです。
歴史をひもといて改めて感じたのは、「印刷文化、文字文化とは記録に残すこと。記録に残すとは刻むこと」ということです。活字や版は凹凸ですし、インクや墨も紙の上で凸です。鉛筆書きだって芯が削られています。しかしデジタル発信には凹凸がなく、刻む感覚はありません。「削り刻むことに、文字を世に出す覚悟と意味があったのではないか」と思ってしまうのは、昭和生まれ世代のノスタルジーに過ぎないのかもしれません。
(元編集局、代表室・松田 秀敏)