閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

英国青年日本をいける(高橋 乃里子)

2023.01.12

閑・感・観~寄稿コーナー~

 縁あってライアンがお稽古に来るようになって半年が経った。2022年の6月から大阪の大学で研究している科学者だ。

 「外国の方で、お稽古をしたいと言われる方がいらっしゃるのですが」と話をいただいた時は女性だとばかり思っていた。「日本滞在中(1年間)に是非ともいけ花をしてみたい」とのメ―ルに書かれた名前が “ライアン”。「わぁー男性だ!」。いけ花=女性、という思い込みを反省した。

 さて、先ずはお試しに来てもらうことにした。数日後にやって来ることになり、猛スピードで簡単なパンフレットを作り、当日を迎えた。説明の後いけてもらったが、お稽古中声をかけるのも憚れるほどお花の世界に浸っており、後で感想を聞くと「楽しい!ストレス発散になる。是非とも続けたい」とのことで、現在に至っている。

 そういえば米マサチューセッツ工科大学のストレス解消の研究で、最良の方策として「茶道」と「華道」が紹介されていたという記 事を読 んだことがある。国や人種、性別にかかわらず,、華道に興味を持つ方か増え多くの方のス トレス が解消されればこんなに嬉しいことはない。そう考えると日本をはじめ世界に華道の効 能を発 信することが大切なことに思えてくる。

 色々なことを考えさせられるライアンとのお稽古だが、お花の扱いはもとよりお道具の 扱いも 丁寧、一度説明したことは忘れない。また、いけ終わった後「この辺がノイジー」など 的確な コメントをする。どこが問題なのかがわかる目を持っている。

 お正月の若松をいけた時 には、 水引をかけることに興味津々。かけ終わった後は、少々興奮気味で写真を撮り大切に持 ち帰っ た。残り半年余りになったが、彼とのお稽古の時間をエンジョイしたいと思う。

                                                                         (診療所OB 高橋 乃里子)