閑・感・観~寄稿コーナー~
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創刊150年記念寄稿 ベヒシュタインは2台あった? 深まる謎  (蓮見 新也)

2022.04.09

閑・感・観~寄稿コーナー~

 「毎日文化センター2階にあるベヒシュタインは旧社屋にあったものですか?」

 年度末の多忙を極める2022年3月、毎友会事務局のある人事・総務部から問い合わせがありました。何のことかと思っていたら、直後に渡会文化会長からメールをいただき、印刷局OBの入口邦孝さんが3月7日付で、ベヒシュタインについて寄稿されているのを知りました。

 入口さんが愛した、ピアノの世界三大名器の一つ、ベヒシュタインは木目調で脚が1本壊れていたとのこと。文化センターにあるフルコンサート用のベヒシュタインのグランドピアノは黒。入口さんの疑問は「黒に塗り替えたのか?」というものでしたが、取材して調べた結論としては元々、黒で、2台のベヒシュタインがあった可能性が高いです。

 取材はまず、文化センターにあるピアノの由来から始めました。うちにあるベヒシュタインは旧社屋南館の国際サロンにあったものを持ってきたもので、折れた脚を修理した痕跡はありません。移転時から、メンテナンスをしてもらっているベヒシュタイン正規代理店の「ピアノプラッツ」さんによると、「過去にピアノ発表会で使われた際のベヒシュタインの写真を見たが黒塗りでロゴが入っており、現在のものに間違いない」ということでした。

毎日文化センターのベヒシュタインは、今でも名器の音を響かせている

 では、もう1台のベヒシュタインはどこへ行ったのか?ここからは毎日文化センターに出向している身としては荷が重い解明で、毎日新聞社本体の問題です。ただ、行きがかり上、可能な限り手を尽くすのも役目かなと取材を進めました。

 総務部の帳簿、経理部の固定資産台帳、不動産部の台帳などに記載がないか現役の担当者をあたりましたが、予想通り、なし。もちろん、新社屋内倉庫などに眠っているということもありませんでした。

 次に、1992年の新社屋移転前後に総務・管理部門に在籍したか、新社屋移転チームに入っていたOB十数人に当たりましたが、「旧社屋北館に脚の壊れたピアノがあった」という記憶を持つOBが数人いたところまで。文化センターにあるベヒシュタインを運ぶ際の保険代が高かった記憶があるというOBも、もう1台の存在すら知りませんでした。文化センターのベヒシュタインも移転以降、本来の音色を取り戻す復元に100万円程度かかっており、脚の折れたグランドピアノの修理は相当なお金がかかることから、どこかに譲渡されたか、処分された可能性が高いです。

 当時の社報、新聞記事も当たってみましたが、記載はなく、ここまでが限界。新しい事実が判明したら「続報」ということで、現段階までの報告とさせていただきます。

 なお、文化センターのベヒシュタインは、ロビーコンサートや、ピアノを使う「世界街歩きクラシック講座」などに活用され、名器の音を響かせています。コロナで受講生数減に悩む日々ですが、春の講座案内もでき、毎友会の「催しの案内」欄にも3月11日付で掲載いただきました。ベヒシュタインのコンサートも定期的に開催しています。一度、ホームページ(http://www.maibun.co.jp/wp/)をのぞいてみてください。毎友会会員の方には特典がありますので、蓮見に声がけしてください。ご受講をお待ちしています。

          (毎日文化センター出向・毎日新聞社特別嘱託、蓮見 新也)