閑・感・観~寄稿コーナー~
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タウシュベツ川廃線橋(入口 邦孝)

2021.12.27

閑・感・観~寄稿コーナー~

 このところ、撮り溜めた写真の整理に専念していますが、特に取り分けて保存している中に4年前の2017年6月に行った、かつて北海道糠平湖に架かっていたタウシュベツ川廃線橋の写真がありました。糠平湖は北海道のド真ん中に近い十勝岳の東側に位置しています。タウシュベツ川廃線橋については昨年(2020年)10月13日付の本紙夕刊にも特集され、写真は、その記事の切り抜きとともに保存していました。その記事を読まれた方も多いと思いますが、写真と共に振り返ってみました。

 タウシュベツ川廃線橋の現状は写真①②③で、私が行った時期が糠平湖の湖水が引いた状態でしたので湖底の橋脚基部からの橋の全容を見ることが出来ました。糠平湖が水を湛えた時期に私とほぼ同じアングルで同橋を撮った写真がネットにありましたので、比較参考に紹介してみました。同橋はコンクリート橋ですが、長年の風化浸食で全体に崩落が進み、まさにどこかの国の古代遺跡を思わせるに十分な雰囲気を感じさせてくれます。私が行った年の秋にも大規模な崩落があったようですし、糠平湖が満水時にはこの橋は水没しますので、タイミングが悪ければ橋の姿をまったく見られないことがあるようです。

①タウシュベツ橋1(2017.6.22)
<参考>ネットより
②タウシュベツ橋2(2017.6.22)
③タウシュベツ橋3(2017.6.22)

 旧士幌線は、旧国鉄が材木など森林資源と農作物の積み出しのために、1922年(大正12年)アーチ型橋梁30基余りを含む総延長79kmの建設を始め、タウシュベツ川橋は1939年に完成しました。大戦後の1955年には水力発電用として現在の糠平湖が築造され、士幌線が新線に付け替えられたことにより、橋としての役割を終えました。士幌線自体も1978年に沿線の一部がバスやトラック輸送に切り替えられ、1987年には全線が廃線となりました。

 タウシュベツ川橋の特異なスタイルは、地域が大雪山国立公園内にあるため、その景観に沿うようにと、アーチ型のデザインが採用されたといわれます。それに、かつての蒸気機関車が煙を吐きながら何台もの貨客車を曳いて橋を渡る景観を重ね合わせて想像すると、時代を越えた一幅のロマンの一コマが浮かびます。

 しかし、この橋もやがて、建設から85年、廃線で放棄されて70年近くが経とうとしています。有形文化財として登録されてはいるものの、保存管理の方法が非常に困難なために、崩落を止めることが出来ないというのは残念なことです。北海道にはかつての産業開発の黎明期を支えた鉄道があちこちに敷かれましたが、今ではその大部分が廃線となり、タウシュベツ川廃線橋もその中に埋もれつつあります。

 旧士幌線内の橋梁や駅跡、線路跡、集落跡は、その保存運動に熱心な士幌町が1997年に買い取ったとのことですが、地元では史跡観光として、NPO「ひがし大雪自然ガイドセンター」が見学ツアーを企画していて、このツアーを利用すればタウシュベツ川廃線橋の傍まで行くことが出来ます。また、これとは別に国道273号沿いに展望台があり、糠平湖を隔てて同橋を遠望することが出来ます。糠平湖は厳冬期には30cmを超える厚さに結氷するので、このあたりから氷上を徒歩で同橋まで行けるそうです。また、わかさぎ釣りでも賑わうとか。

◇2017年6月に夫婦二人で行った行程です。

・札幌在住の長男宅を車で出て、道央自動車道を千歳恵庭JCから道東自動車道に入り一路東へ。トマムスキー場のツインタワーホテルを左に見ながら、帯広市の音更ICで道東自動車道を降り、一般国道241号を北海道の真ん中目指してひたすら北上。上士幌町を過ぎて30分ほどで糠平湖のたもとの「ぬかびら温泉」にある「ひがし大雪自然ガイドセンター」に到着しました。走行約250km、昼食休憩入れて5時間弱でした。

・タウシュベツ川廃線橋へは「ひがし大雪自然ガイドセンター」で見学者全員が長靴に履き替えマイクロバスかワゴン車で行くのですが、ヒグマが出没するので、その安全と史跡保護のために進入路には鍵のかかったゲートがあり、一般通行は禁止されていました。倒木やぬかるみで荒れた旧士幌線の線路跡を行くと突然森が開けて糠平湖岸に出て、その先に目指すタウシュベツ川廃線橋がありました。

・タウシュベツ川廃線橋のある糠平湖は水力発電用に建設された非常に大きな人造湖ですが、当日は水を抜いているのか湖底が露出して、写真のようにアーチ型の廃線橋は全橋脚が基底部から露出していました。

・資料によると、コンクリート製、単線用で全長約127m、高さは基底から約10m、11連のアーチ状橋脚間は約11mとありました。冬季は零下20~30度にもなり、糠平湖は全面結氷し、コンクリートの橋脚内部に沁み込んだ水分が氷結し膨張するために、コンクリートの崩壊が激しく、全崩壊が懸念されています。

・その他の橋梁もコンクリート製で、険しい谷越えなどの橋も樹々に埋もれて残されていました。

・旧士幌線駅跡としては、「幌加駅」がそのままに、線路やポイント切り替え機なども残されていました。

 約2時間余りのタウシュベツ川廃線橋見学の後は、いったん上士幌町の役場近くまで戻り、国道を替えて山奥へ。さらに途中から国道をそれて地道を走り、「ぬかびら温泉」から約1時間で北海道最奥地の山深い「芽登温泉」に到着しました。当日は他に宿泊者も居ない私ら夫婦独占の宿で、露店風呂はすぐ横を流れる渓流沿いにあり、野生の鹿が見えるなど、自然いっぱいを満喫しました。牛肉のしゃぶしゃぶをメーンにした夕食も素晴らしく、家内はもう一度行きたいと言います。帰途は帯広市内を巡って、音更帯広ICから再び道東自動車道に入り、札幌へ帰着しました。

旧士幌線「幌加」駅跡(2017.6.22)
芽登温泉(2017.6.23)

                           (旧印刷局、入口 邦孝)