閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

絵でたどる今と昔(景観ルネサンス)(内田 年男)

2021.09.29

閑・感・観~寄稿コーナー~

◇画集に協賛をいただいたのは岸和田美術の会の方々です

 岸和田市にはかつて城壁を囲むように多数の川があり、煉瓦造りに適した良い土がありました。⑤岸煉(きしれん)煉瓦工場は工場地帯として発展し臨海線に煉瓦堀があり画集の作品は平成18年に描かれたものです。尚写真は2021年現在のものです。記憶にあるところでは学生時代の昭和40年は、防波堤ですぐ砂浜でした。その横には鯔川(イナガワ)が流れていて海に注いでいました。現在はその場所にレンガ壁があり遊歩道となり、山に向かってたどると紀州街道と交わり、そこには橋桁があり、岸煉瓦モニュメントが建てられました。

 存在を記すように多数の橋桁が残されていて、橋には人名がついており、岸和田の文化に触れることが出来ます。コロナ渦で施設が閉鎖され何も出来なくなった時、気がつけば目の前に画集がありました。念願であったスポーツサイクルを購入し、友人と二人でプロジェクトを組み、行動は単独で情報交換をしながら画集のイラスト地図だけを頼りに一日3ヶ所くらいに絞り、走り出しました。

 5ヶ所くらい見つけた日や何も判らない日は焦りがありました。まぼろしと思ったのは3ヶ所で 三田町の牛舎風景阿間河滝町の旧貯水槽大沢町の筍缶詰工場。牛舎風景については牧場がないので取り壊されたものと思い込み。貯水槽は作者が描かれた場所からは山が茂っていて見えないのです。当時は梅の木が植えられ花が満開の絵ですが現在はみかん山になっていて、何度もそれらしき場所を訪れ聞き取り調査をしました。

 缶詰工場探索では聞き取り調査でも、「栄えていた頃はたくさん工場があったが取り壊された」と消極論で半ば諦めていたのですが、それでも山に向かって走ると気が付けば隣村到着、その時です、山が呼んでいました。作品と似た山なのです!折れた煙突が目に飛び込んできてしばらくは棒立ちのままじっと見つめていました。まるで「さだまさしの唄の世界」、、こんなとき歌いたくなるのです。 工場は野菜の納屋に模様替えしましたがちゃんと残されていて、持ち主の民家には同じ絵が置いてあり感動しました。

 他にも 稲葉町井坂酒造額町根来家の民家で作品が大事に飾られていました。外観しか見えない民家には稲葉町森家稲葉町井坂酒造本宅額町根来家、これらには苦労がありました、、森家では何度か訪れたある日、玄関先でご主人と出会い短時間ではありましたが撮影に成功、ご主人のやさしさに感謝です。

 井坂酒造、三輪福では店主様のやさしさに加え、絵画を愛する気持ちが伝わってきて、「ほんとうにありがとう」が言いたいです。本宅の庭と醸造所、大事に保存されている「暖簾の絵画」まで見せて頂きました。岸和田に立ち寄られた際には是非、稲葉町井坂酒造を見学してみてください。

 額町根来家では聞き込みを行い、根来家は一族がたくさん存在しており、作品の庭が全く違う場所にあったことで時間を費やしましたが、ラッキーとはいえ隣りの根来家ご隠居様宅での聞き込みで連絡をお願いすることが出来ました。ご本家の根来様には何度も連絡を頂き、念願の庭撮影と、ご厚意もあり室内の襖絵や弓、土間など拝見しました。作者の描かれた立派な庭のアングルをしっかりと見せて頂き、目に焼き付けました。

 ちょっと変わった表題といえば「ノウゼンカズラの咲く頃」で、丁度その時期に藤井町藪家、茅葺きの民家探索でした。作品からは茅葺き屋根が目に飛び込んでくるが、この花の咲く頃にまた来てみたいという作者の意図が伺えますね。岸和田市に茅葺き屋根があることの驚きと、土堀の右端にしっかりと咲いているその花の存在でした。

 さわやかな風を感じながら景色を眺めゆっくり走ると、昔の人がどんな生活をしていたのか、少し観えてきました。そこには小川があり、谷があり祠がありました。長い間岸和田市に住んでいて、こんなにも知らないことがあるのかとびっくりしています。作品には坂道が描かれていて、少し登った所に古民家があり必ず川が流れていました。

 残念ではありますが、探索の結果11カ所の建物が無くなっています。美術の会の皆様が苦労して作成された画集には、この美しい風景を失くしてはならないそんな気持ちがよく伝わってきた作品でした。

 この企画に協賛をいただいた岸和田美術の会の皆様ありがとうございました。

             (元編集制作センターG2・内田 年男)