閑・感・観~寄稿コーナー~
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1日1万歩への道(西村 健一)

2020.09.21

閑・感・観~寄稿コーナー~

 新聞社時代は出張が多く、タクシーに乗ることも多かった。関係会社勤務を経て

7年前に完全リタイアし、「自由の身」になった時、さて何をしようかと迷った。

とにかく歩きながら考えようと自宅から手近かな道を歩き、ランチをして帰ることが

始まった。若いころから歩くことは嫌いでなかったが、とにかく現役時代は時間がなかった。歩かなかった。

 リタイア後、まずスポーツジム通いを始めた。ところが右ひざが痛みだした。整形外科に毎週ヒアルロン酸の注射を打ちに通う羽目になった。

 6年前「京都シニア大学」に入学した。学生数200名、平均年齢75歳の創立45年の京都では先鞭をつけた老人大学である。一般教養と選択課程の講義以外に同好会活動が盛んであり、カメラクラブとウオーキング部に参加した。

 ウオーキングは毎週火曜日、週ごとに定められている場所に集合し、幹事の世話で2時間程度歩いて昼食をして散会するという気ままな団体である。ある時 仲間のうち、帰る方向が一緒のメンバーに誘われ、解散後 金閣寺から銀閣寺近くの自宅まで歩く機会があった。さらに京都の南西の嵐山から北東の自宅まで歩いて帰宅したこともあり、10キロ以上歩けるという変な自信がついた。そしていつしか「1日1万歩」を歩いてみようという目標を作ることになった。

 ここ数年間は週一のウオーキングをはじめとして、烏丸丸太町にあるシニア大学からの帰りも歩いて帰宅(約50分)なども入れ月間30万歩をほぼクリアーしてきた。

 78歳になった昨年秋の人間ドックの胃カメラでひっかかり、12月に10日間入院し「食道がん」の手術をすることになった。幸い早期発見で経過もよく、主治医の勧めもあり、正月明けからリハビリをかねて「自宅周辺のウオーキング」を再開した。

 そして新型コロナウイルス騒動がはじまり、病気のため11月から休学していたシニア大学も3月から全面休講となった。緊急事態宣言が出され、外出自粛、ステイホームを余儀なくされることになった。幸い親の代から住んでいる拙宅は京都の左京区、吉田山の東側麓にあるため、周りに緑が多く四方八方に歩くところがあるので、「ひとりウオーキング」をはじめた。好きな時間にひとに迷惑かけず、お金も使わず気ままなウオーキングを楽しんでいる。

 自宅から東西南北のコースを設定し、東コースは白川通りを超え哲学の道、鹿ケ谷から永観堂、南禅寺方面へ、西コースは吉田山を越え吉田神社から京大構内へ、鴨川まで足を延ばすことも。南コースは真如堂から黒谷(金戒光明寺)経由で平安神宮など岡崎へ、北コースは法然院、銀閣寺から琵琶湖疏水沿いに京大農学部のグランド方面へときままに歩き回っている。約2時間 距離にして7キロ程度が日課で、この半年で2000万歩、1500km歩いた。京都から東京へ一往復半した計算になる。

 吉田山では鶯の泣き上手になり具合を感じたり、道端の住宅から聞こえてくるピアノ音などを道ずれに 膝の痛みもここ5年間は全く感じることがなく、気楽な「ひとりウオーキング」をこれからも楽しみたい。(元販売局・西村 健一)

一人ウオーキングを楽しむ
楽しんで一人ウオーキング