閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

島で暮らす(9)散々だったハモの骨切り(元田 禎)

2020.08.25

閑・感・観~寄稿コーナー~

    2020年7月は雨が多く、しのぎやすい日々だったのですが、やっぱり暑い夏はやって来ました。

 2019年11月に漁師の世界に飛び込んだ僕は、広島県福山市内海町のマルコ水産(兼田敏信社長)で、もっぱらカキ養殖に取り組んでいます。内海大橋が見渡せる内浦湾に、マルコのカキ筏(いかだ)はあります。

 「カキは冬の食べ物」と思われる方は多いでしょうが、マルコが育てている「かき小町」は、広島県が品種改良し、「夏でもおいしく食べられるカキ」なんです。 通常の真ガキは夏に産卵し、身が細ります。栄養分が抜けた「水ガキ」となり、食用には適しません。かき小町は産卵しないカキで、ゆえに年中食べることができます。

  育成中のカキは網目のかごに入れ、海中に吊り下げます。1~2カ月もすれば身は太るのですが、かごには余計な生物が付着する場合が多いため、海中から引き揚げるのは重労働。ジーンズの上に通気性のないカッパを履いているため、この季節は、短時間の作業で全身から汗がふき出します。だから、仕事を終え、家で飲むビールがうまいの何の。

 早期退職した19年10月、「島生活がしたい」と突然思い立ちました。仕事はしんどい。ただし、海の幸を堪能できる生活は格別です。 「夏といえばハモ」。ハモは、田島漁協青年部が主催する「とれぴち活魚市場」で何度も買い、僕は「ベテラン漁師でも難しい」と言われる「骨切り」に挑戦しました。結果は散々でした。

 敏信社長の次男純次さん(38)は元料理人で、その包丁さばきは見事というしかありません。活魚市場は8月22日で終了し、新鮮なハモは入手できなくなりました。リベンジは、来年の夏までお預けです。

(元広島支局・元田 禎)

 

ハモをさばく兼田純次さん。とれぴち活魚市場にやって来た外国人観光客もみとれていた
刺し身包丁を押し出すようにして身を切る「骨切り」は、簡単そうに見えてかなりのテクニックが必要だ