閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

ポケットにわざと残した硬貨を貯金して中村哲さん支援(久保 晃弘) 

2020.07.26

閑・感・観~寄稿コーナー~

 梶川伸さんから2020年7月22日、「中村哲さんお別れ会とペシャワール会への支援のことを毎友会HPに書いて」との封書を拝受しました。ちょうど同日、ペシャワール会から「寄付受領」のはがき(写真が届いたこと、さらには偶然、大学同窓会誌に近況報告(別記)を投函したところでした。書くべき縁だったのかとーー。

 中村哲さん支援のため小生は(ポケットにわざと残した硬貨を貯金して)同会に毎年寄付しています。同会とのつながりはそれだけのことです。ただしコンタクトはペシャワール会発足の1983年の前から続けています。

 中村哲さんは日本キリスト教海外医療協力会からパキスタンへ派遣され、ハンセン病治療に従事しました。その頃の会報に「せっかく治療したのに数か月経たたぬうちにまた戻ってくる。はだしの生活が原因なのです。医療だけでは完治しない」「古タイヤを送ってください」と注文。中村さんは現地でサンダル手作り職人にもなったのです。

 クリスチャンの中村哲さんは福岡高校の後輩(大学も)なのです。こんな後輩を応援しないわけにはまいりません。同校同窓会には大阪はもちろん福岡、東京にも出かけて支援を呼びかけたり、講演会開催の手伝いをしたり、著書やカレンダーのなどのグッズの売り子(写真=1997年5月25日同窓会で、ひげの中村さんの後ろが久保)をしたりしました。

 中村さんが医師でありながら、飲み水確保のため井戸掘り作業員にもなり、「食べなければ病気にもなる」と、現地の人にでも建設、修理できる古来の蛇籠工法を駆使して農業用水建設工事人にもなったのは、皆さんご存じの通りです。1988年に毎日新聞社が中村哲さんに「毎日国際交流賞」を贈りました。新聞社の中で最初に中村哲さんを顕彰したのです。毎日新聞の見識の高さが誇らしくうれしさに感動したものです。地元の西日本新聞社の「西日本文化賞」は1年遅れて、読売、朝日は数年遅れて賞を与えました。

 中村哲さんは2019年12月4日、ジャララバードで銃撃され死去、世界中の人が嘆きと悲しみに沈みました。ペシャワール会報には毎号、中村哲さんの現地報告や随想が掲載され愛読していましたが、143号(2020.4.8)からはその達意の文章は消えてしまいました。中村哲さんの文章は簡潔で分かりやすく見事な筆力でした。母方の叔父が芥川賞作家の火野葦平ですから、天賦の才能が備わっていたのでしょう。あえて彼の著作をあげます。(なお、父方は福岡大空襲で全滅したとのことです)

 アフガン・緑の大地計画 医者、用水路を拓く ダラエ・ヌールへの道 ペシャワールにて 辺境で診る辺境から見る 医者井戸を掘る 医は国境を越えて(以上石風社)

 天、共に在り(NHK出版)アフガニスタンの診療所から(ちくま文庫)など。澤地久枝が聞き手の「人は愛するに足り、真心は信じるに足る アフガンとの約束」(岩波書店)は中村さんの温かい心がじわり伝わります。 

                 ◇

 中村哲医師お別れ会は2020年1月25日、福岡の西南大学チャペルで営まれました。

 数千人を収容するため、いくつもの教室に分かれ式が進められました。駐日アフガニスタン特命大使、北岡JICA理事長らの挨拶のあと、長男の健さんと長女のあきこさんが家庭での父の姿を披露し、「父は行動で示せ、といつも言いました。父の生き様を今後の指針にします。父の遺志を引き継ぎます」と力強く。参列者全員が中村さんの遺志をつないでいくことを誓いながら遺影前に献花しました。

                 ◇

 中村哲さん殺害の犯人は分かりません。地元民や地元組織にには何のメリットもありません。タリバンも明確な反応をしていません。「憲法9条があるから私達は現地で守られているのです」と発言し続けた中村哲さん。その存在がじゃまな勢力とはーー、今も考えています。銃撃直後の12月5日のSNSに「こいつ、安倍政権を批判した9条信者じゃん 自業自得」との書き込みもありました。日本にはこんな輩も勢力も多数いることを忘れてはなりません。書き出し部に案内した「近況報告」を以下そのまま転記します。

 

 82歳です。中村哲さんお別れ会(2020.1.25)に大阪からかけつけ参列しました。この同窓会誌に支援の広告を載せていただいてきたご縁もあり、無念の思いは消えません。

 上皇様ご夫妻は中村さんの暖かいよき理解者でした。安倍晋三首相がトランプ米大統領をノーベル賞に推薦したこことが問題になりましたね。中村さんこそノーベル平和賞の最有力候補だったはずですが。「武力ではなにも解決できない」と言い続けた中村さんを嫌いだったようです。コロナ禍の中、日本憲政史上最悪!?のトップをいただいたまま弱った生を全うするのがしんどい毎日です。

(元整理部・久保 晃弘)

 

写真1
写真2