閑・感・観~寄稿コーナー~
SALON

地域の力、老人クラブ(伊藤 英夫)

2020.07.15

閑・感・観~寄稿コーナー~

 関空のおひざ元・泉佐野市では、60年前に設立した高齢者の自主組織「老人クラブ」を「長生会」と名乗っている。しかし、「長生会って何?」と尋ねられることもあり、少子高齢化時代の中で老人クラブの認知度はいま一つのようです。

 私が60歳でリタイアしてからもう20年近くになる。定年前には正直、老後の設計は一切考えていなかった。「退職したらゆっくりできていい」と安易に思っていたが、すぐに「どうして過ごせば……」と不安になったものである。

 振り返ると、仕事一筋の人生で会社のことしか考えてこなかった。一応、退職金はもらったが、まだマンションのローンも残っており、これといった趣味もなく、年金で生きる「第2の人生」はお先真っ暗なありさまでした。

 こんな私に新しい道をつくってくれたのが会社の先輩で、老人クラブとの関わりができました。「定年後、時間はたっぷりある。写真を撮り、記事を書けばいい」と勧められ、印刷会社のアルバイトになり、年4回発行する大阪府老人クラブ連合会発行の機関紙「ねんりんOSAKA」の編集を担当しました。

 その後、地元の泉佐野市長生連会長から「ぜひ、地域の力になってほしい」とボランティアの依頼を受け、再び、広報紙づくり(年3回発行)に取り組むことになりました。

 長生連は市内の50単位長生会で構成、60代前半から90歳までの会員数は約5500人。老人クラブ活動の3本柱は介護予防・健康づくり▽趣味などを通じての老後の生きがいを見つける▽友愛活動・社会貢献です。趣味のクラブ活動では、カラオケや将棋、健康マージャン、生け花、ソロバン、グラウンドゴルフ、ゲートボール、詩吟、ダンス、体操など、サークル活動を実施しています。

 また、地域で引きこもりの高齢者の会員にサロンを開設し、コーヒーを飲みながら談笑する友愛活動や、学童の下校パトロール、小学生に農業体験させるなど、地域貢献も積極的に展開しています。

 しかし、老人クラブにとって最大の悩みは全国的に起きている会員減少問題です。会員加入促進運動で地域の会長が65歳になった高齢者宅を戸別訪問しても「自分は老人ではない」と入会を断られる、と嘆いています。一方、年を重ねて、会員をやめる人も多いのが現実です。

 10数年前、府内の老人クラブ会員(政令指定都市の大阪市を除く)は31万人以上いましたが、堺市老連が府老連から脱退し、5万5千人の会員が減りました。さらに、65歳以上の高齢者が4人に1人という高齢化社会を迎え、現役世代の減少が深刻になっています。定年延長で働く高齢者がますます増え、年金支給年齢が引き上げられるなど、社会的な要因も重なって会員の減少に歯止めがかからない危機的な状況になっています。

 一方、国は「人生100時代」と高らかに打ち上げていますが、医療、福祉など、高齢者を取り巻く社会環境は一段と厳しいものがあるようです。

 戦後、苦難に耐え、日本の復興を支えてきたのが今の老人です。そのパワーは決して衰えていないと思います。世界中に感染が拡大した新型コロナ禍が巻き起こす負の波にのまれていますが、きっと明るい光が輝くことでしょう。仲間の輪を広げ、豊かな老後を目指し、共に生きがいを追い求めていきたい、と願っています。

(元編集制作センターG2・伊藤 英夫)

 

広報紙「長生会だより」