閑・感・観~寄稿コーナー~
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島で暮らす(4)沖の仕事に、いつお呼びが掛かるのか(元田 禎)

2020.03.06

閑・感・観~寄稿コーナー~

 今シーズンの海苔の刈り取り作業は、陸上に例えるのなら最後の直線、バックストレートに入りました。
 マルコ水産(広島県福山市内海町)は、2019年12月19日に刈り取りを始めました。黒々とした一番摘みと比較すれば、今行われている四番、五番摘みの違いは、素人でも簡単に分かります。 海の栄養をふんだんに取り込んだ一番摘みは、やっぱり惚れ惚れするほどの色合いです。
  海面と海底の水の入れ替わりは、摂氏18度になると活発化します。いったん海に張り込んだ海苔網は一度冷凍保存され、18度になったタイミングで一枚一枚を張り込む「本張り(単張り)」へと移行します。一番摘みは色が鮮やかなだけではなく、海苔も柔らかいため、二番以降と食感の違いも歴然としています。
  漁期は3月15日までで、網の撤収作業が同時に始まっています。マルコの網は約2300枚。この作業はもちろん重労働なのですけれど、力だけでなく、漁師としての様々な技術が試されます。
  「早うしまわんといけんけぇ、素人が来てものぅ。教える暇もなぁで」と言われている僕ですが、兼田敏信社長の次男純次さんには「元田さん、沖の仕事はもうじき終わる。一回は行かんといかんのぅ」とハッパをかけられています。
  そう、海苔に関わる作業は、漁師になったばかりの僕には、出来ないことばかりなんです。「出来るなぁ。じゃまするだけかなぁ」。58歳の新人は、いつお呼びが掛かるのか、期待と不安を感じながら待っています。

(元広島支局、元田 禎)

 

黒々とした一番摘みの海苔
四番、五番ともなると情けないくらい脱色
している