閑・感・観~寄稿コーナー~
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ダーウィンの島でゾウガメに会った (奥田 千代太郎)

2020.02.08

閑・感・観~寄稿コーナー~

 ダーウィンの島は、手つかずの自然と、どこまでも広がるコバルトブルーの海原、厳しい環境に適応した鳥たちの乱舞、人を恐れぬ動物の予期せぬショーで迎えてくれました。

 「お父さん、旦那が休みを取るから、一緒にガラパゴス諸島に行って来たら!」。昨年の早春、ブラジル・サンパウロの旅行社に勤める娘から思わぬ提案が。“世界の果てといわれる進化論の島に行きたい”という夢が実現する日がこようとは思いもしませんでした。それから、妻も娘一家も含めて計6人のガラパゴス行が決定。欧米人の予約で1年前には埋まってしまう、というホテルもクルーズも運よく取れて。

 関空-ドバイ-サンパウロ30時間、サンパウロ-エクアドル・キト6時間、キト-ガラパゴス3時間半の長旅の末、ついに世界遺産第1号・進化論の島々が眼前下に姿を現しました。チャールズ・ダーウィンがイギリスの軍艦「ビーグル号」で上陸してから185年目です。荒涼としたバルトラ島に作られた簡素な空港から船、バスを乗り継いで群島の中心地・サンタクルス島へ。

 目の前をソウガメ、イグアナが・・・

 早速、ダーウィン研究所を訪ねますが、途中の牧場ではお目当ての世界最大の陸亀・ゾウガメがいるわいるわ。道路をのそのそと歩いていたり、牛に混じってのんびり草を食んでいたり、沼地で泥んこ遊びをしていたり。2m以内に近づかなければ、見放題、写真も撮り放題です。続いて恐竜を連想させるウミイグアナ、リクイグアナ。ともにガラパゴスの固有種。道路で日向ぼっこをしていたり、眠っていたり。危うく踏んづけそうになるほどの至近距離です。

 2日目からはいよいよ船で島めぐりツアー。といっても船が横付けできる桟橋はなく、沖でボートに乗り換えて荒涼とした島に跳び移ります。ノースセモイア、バルトロメ、プラザ、サンタクルスの島々を歩き回って見たのは、ゾウガメ、イグアナのほか、アシカ、ペンギン、アオアシカツオドリ、カッショクペリカン、アメリカグンカンドリ、アカメカモメ、ヨウガンカモメ、オオフラミンゴ、ミミズク、キイロアメリカムシクイ…などなど。

 ほとんどがこの島の固有種のため、ガラパゴスペンギンなどと、頭に「ガラパゴス」と付きます。ここでしか見られない貴重種ばかりで、出くわす度に、溶岩をベースにした荒地と抜けるような海に歓声が響き渡っていきます。

 なかでも進化論の鍵を握るといわれるダーウィンフィンチはいたるところに出没します。スズメ大の小鳥。共通の祖先から出発しながら、嘴を進化させることによって繁栄を勝ち得た野鳥です。嘴の形と餌の種類によって、ハシブト、キツツキ、ムシクイ、サボテンなど18種類に分かれます。もちろん一目で見分けがつきません。

変化できる者だけが生き残る

 「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」。ダーウィンの進化論を証明するこれらの鳥や動植物が私たちに環境変化への対処方法を教えてくれます。

 かつては海賊の隠れ家、その後、捕鯨基地や移住の繰り返しによってゾウガメやアシカ、カツオドリ、アホウドリなどが大量殺りくされた苦い歴史の島は、1964年にダーウィン研究所が現地に開設されて以来、やっと安穏とした生息環境を取り戻しました。

 赤道直下とはいえ、旅の間、気温は毎日測ったように同じ最高21度―最低18度。太陽光線の厳しさを除けば、日本の夏よりはるかに快適です。ガラパゴスの無人島で火山爆発があったり、出国の際、キト空港の荷物検査で、不審物ありと疑われてスーツケースが全部ひっくり返されるなどのハプニングがあったものの、1月17日には無事サンパウロに帰還。

 頭の中ではまだ、アオアシカツオドリが求愛ダンスを舞い、小さなペンギンの群れが船べり近くを気持ちよさそうに泳ぐ映像がぐるぐる回り続けています。

(元代表室・奥田 千代太郎)