2020.01.19
閑・感・観~寄稿コーナー~
奈良面に2週間に1回、「『万葉古道』を尋ねて」を連載しています。2017年6月にスタートした企画。昨年3月、20年間、勤務した五條通信部を退職してからは寄稿の形です。
16年の忘年会の席で、奈良支局長だった野原さんに「県版の柱になる連載を」と言われたのがきっかけ。「いずれは書きたい」と思っていた中山間農業、万葉集の2企画案をつくりました。「万葉古道」を選んだのは自分。「道に引っ掛ければ書きやすいだろう」と思ったのだが、これは甘かった。まず万葉時代の道は、位置もよくわかっていない。プロアマ含めた研究者、多くの万葉フアンの目も意識する。図書館に通い、それまで、できれば関わりたくないと思っていた古典とも格闘。
万葉集を身近に感じ、意外性がある記事をと心がけているが、それは荒唐無稽と紙一重のことも。それだけに厳密な取材、検討が必要になる。「とにかく現場に」とまず思うのは50年間の新聞記者生活の中で身に付けてしまった習性でしょうが、力になった。現地に行くと、記事に取り入れられる新鮮な発見もあった。素人考え、感覚もバカにはできな
いと思ったことも。
記者になり立てのころ、先輩に言われた「歩け」の意味、大切さを再認識しています。仕事のなかで細々とかじってきた自然観察、歴史、農林業の知識がこんな形で役に立つとも思いませんでした。土、草の香り、民衆の汗、涙、その美しさ、ひたむきな思い―あまり顧みられていないような万葉集の魅力を引き出したい。
記事は1回1500字、写真4枚。1月7日で52回。締め切りが近づくと「今度は書けないのじゃないか」といつも思ってしまいます。
取材の足は、平坦な奈良盆地内では、娘が残した通学用自転車。桜井市の自宅から奈良市など片道2時間ぐらいまでは行動範囲です。現役の間、移動は車ばかり。退職後、自転車に乗り始めた時は近くのスーパーに行っただけで足腰の筋肉が張ったのに、体は動かしているうちに動くようになりました。
自転車のカゴに地図とノート、資料を入れ、カメラをぶら下げてジーパン、スニーカーがいつもの取材スタイルです。
2019年3月30日で73歳ですが、「古道」で書きたいことはまだあります。
(元奈良五條通信部、栗栖 健)