2019.09.10
閑・感・観~寄稿コーナー~
涼しくなってからと先週末、人気の松方コレクション展に行った。展示品に1922(大正11)年10月15~20日、大阪毎日新聞社の堂島新社屋3階で開かれた「松方幸次郎氏所蔵泰西名画展覧会」図録があった。
97年前である。図録といっても、現在の色彩豊かなものにはほど遠いが、展示作品の作家は、ルノアール、ゴッホ、ゴーガン、セザンヌ、ミレー、レンブラント、ドラクロア、ドーミエ、クールベ、シスレー、ムンク……。松方がパリで購入した作品が神戸港に着き、その作品を展観したのだ。
写真が、大毎の堂島新社屋。地下1階、地上5階、のべ12,200㎡。御影石を外壁に使った重厚な建物で、この3階が会場となった。この新社屋は、その年の3月に完成して、数々の落成事業を行った。サンデー毎日、英文毎日、点字毎日が創刊された。「泰西名画展」もそのひとつだったのであろう。
社史を調べると、同じ3月に「社規として記者は和服を禁止し、洋服、社員章をつけさせる」とある。まだ和服が一般的で、洋服はハイカラだった時代である。
11月には東京日日新聞の新館が完成、その記念事業として「泰西名画展」が開かれている。大阪から東京へ、松方コレクションが運ばれた。
大毎はその11月に、「松方氏浮世絵版画展」を開いている。「泰西名画展」の第2弾である。
さて、上野の西洋美術館で開かれている「松方コレクション展」(2019年9月23まで)。松方幸次郎(1866~1950)がヨーロッパで蒐集した作品約160点を展観している。
HPによると、今回の見どころは——。
①オルセー美術館の至宝・ゴッホ《アルルの寝室》をはじめ、世界各地に散逸した松方旧蔵の名作が集結します。
②2016年にパリ・ルーヴル美術館で発見され、国立西洋美術館に寄贈されたことで大きな話題となったモネ《睡蓮、柳の反映》が現存部分の修復を経て、初めて公開されます。
③ロンドン、パリでの松方の蒐集の足取りをたどりつつ、散逸、焼失、接収…と苦難の歴史を歩んだコレクションの数奇な運命を明らかにします。
入口のフロアに、モネ《睡蓮、柳の反映》の修復後が飾られ、会場の最後に上半分が失われた実際の作品が飾られている。
是非、会場へ足を運んでください。
(堤 哲)=東京毎友会のHPから(トピックス)2019年9月9日