閑・感・観~寄稿コーナー~
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万が一の災害に備え、「FMおおつ」を開局させて2年目に(古田 誠)

2019.09.04

閑・感・観~寄稿コーナー~

  •  僕は毎日新聞社に入る前、20歳で中学高校の仲間と大津のタウン誌「水の国」を創刊し2年間発行していました。そのあと毎日新聞社に入り新聞記者の仕事をしながら毎週1時間のテレビ番組作りに関わったり、インターネット黎明期に様々なコンテンツ作りに没頭したり、今から思えば実に自由に大好きな仕事をさせて頂きました。

 50歳で選択定年の権利が与えられると、速攻でお暇をいただきました。それまでやったことのないラジオの仕事がしたくって30年近く奉公した新聞社を退社、和歌山放送という県域AMラジオ局に仕事場を移しました。メディア畑を一筋に歩んできましたがラジオだけが機会が無くて出来なかったので、新聞社時代でも足を踏み入れたことのない和歌山に単身赴任したわけです。

 そこで待っていたものは、南海トラフ地震の被害想定で全国34万人が亡くなるうち、8万人以上もの和歌山県民が犠牲者という恐ろしい現実でした。発災から2、3分で津波が到着する串本町や那智勝浦町を抱える和歌山で防災に関する仕事とFM補完の仕事の両方に没頭していました。串本町役場に入った瞬間壁一面にオレンジ色の救命胴衣がズラッと並んでいて、役場職員の身体を張った本気度が一目瞭然で、思わず目頭が熱くなってしまいました。

 和歌山の人にとっては南海トラフ、我が故郷大津の人にとっては花折断層帯が喫緊の課題です。60歳になったらもう一度選択定年の権利(今度は放送局)を履行して故郷大津に戻って活断層帯の真上に立つ大津の地に発災前からラジオ局を作って備えておこうと決意しました。OBの辻哲郎さんにも手伝っていただいて総務省近畿総合通信局放送部放送課に1年半通い詰めて、ようやく総務省から79.1MHzの周波数と免許証をいただき、2018年4月、大津市役所の目と鼻のそば大津市山上町でコミュニティラジオ「FMおおつ」を開局させました。早いもので既に開局から2年目に入っております。

 まだまだ赤字だらけで毎日ヒーヒー言いながらも、志ある人たちが集まってくれたおかげで放送事故も起こらず(実際は初期の頃は何度も起こしましたがそれは別の機会に)、今春から「FMプラプラ」(https://fmplapla.com/fmotsu/)を試験導入し、大津市内は元より全国、いや全世界でどこでも「FMおおつ」をお楽しみいただけるようになりました。

 幼稚園、小中学校の同窓生や新聞社の同僚の皆さんに少しずつ出資していただき株式会社として運営しています。和歌山放送時代、災害時に備え臨時災害放送局のラジオ実験で共に汗を流した和歌山県情報化推進協議会の仲間達も和歌山を離れてもなお、激励し続けています。時間があると僕も和歌山の実証実験に顔を出しています。

 花折断層帯が東西南北に走る琵琶湖西岸断層地震が起きれば死傷者14000人、避難者82000人の被害が出て、大津市では4人に1人が被災するそうです。この140年あまり、幸い大きな自然災害はありませんが、心配性の僕はラジオ局を作り、万が一の災害に備えたつもりです。

 開局という機会が無ければ、お互い顔を合わせることもなかった僕の年齢の半分以下の若い出演者やスタッフおよそ45人が入れ替わり立ち替わり毎日スタジオに元気に顔を出し、午前6時から午後9時まで一日16時間の放送の全ては自主制作で行っています。ローカルにこだわり出演者のほぼ全員が地元大津市の出身。スーパーの売り出し、学校給食メニュー、大津市消防局からのリアルタイム情報、災害情報、防災情報などを、一日4回計360分の生ワイド番組を有効に使ってリスナーに届けています。番組に留まらずCMやWEBもローカル色あふれるものに徹しています。

 毎友会の皆さん、ぜひ一度だまされたと思って「FMプラプラ」で「FMおおつ」の番組コンテンツをお聴きください。その瞬間あなたも間違いなく「FMおおつ」のとりこになるはずです。特におすすめは毎週土曜日午前7時20分からの「FMおおつ English Hour」です。英会話をもう一度楽しんでみたい方には最適です。(うわー、こう書いちゃったから責任重大です。もっともっと面白い番組を作らなくっちゃ。)

(元編集制作センター 株式会社FMおおつ代表取締役 古田 誠)

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