閑・感・観~寄稿コーナー~
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黄土高原の緑化に協力して(藤田 修二)

2019.07.08

閑・感・観~寄稿コーナー~

 緑の地球ネットワーク(GREEN EARTH NETWORK 略称GEN)というNGOがあります。本部大阪。28年前から中国の黄土高原の緑化活動を続け、2005年には毎日新聞社の「毎日国際交流賞」を受賞しています。

 黄土高原はそのはるか西の砂漠地帯から風で運ばれてきた黄土が、山脈にさえぎられて降り積もった広大な地域です。実際にGENが活動してきた場所は、黄土高原の北東端にあたる山西省大同市で、北京から西に300㌔、標高約1000~2000㍍。市と言っても大阪・京都・兵庫府県を合わせたほどの面積があり、ほとんどは荒漠たる黄色い大地が広がる寒村地帯です。

 年間降雨量は約400㍉。山に木々はなく10年のうち9年は干ばつという半乾燥地帯です。しかし、4世紀から5世紀にかけて大同には北魏の首都がおかれ、1056年に建造されたという世界最大級の木塔も残っています。こんな自然条件の下でも元々は木が茂っていたということです。

 長年にわたる燃料木の伐採、過耕作・過放牧による土地の収奪などで大地は荒れていき、ついには砂漠化していきました。

 ここは日中戦争の激戦地だった所でもあります。ノーベル賞作家、莫言の「赤い高粱」(映画化されましたね)に描かれたような住民の悲劇も起こりました。ですから、活動の最初のころ、対日感情は極めて悪かったようです。GENはまず人間関係の構築から初めて徐々に村の中に融けこんでいきました。貧しい村で現金収入を得るのに、アンズを植えて成功を収めました。おかげで村民の子弟で大学へ行く子も出てきました。井戸を掘り喜ばれました。

 私は毎日国際交流賞受賞を機にこの会の活動に関わりました。以来6-7回現地に足を運んだでしょうか。

 農家に泊めてもらい、食事もいただきました。真っ暗な夜、家の外に穴を掘っただけの便所で用を足すのは一苦労でした。便所に板が枚渡してあるだけですから、穴の中に落ちてしまった日本人もいるそうです。

 現地にカウンターパートも発足し、20数年間で日中協力して植えた木は5920㌶に1857万本に上ります。ある一山全体を放牧禁止にしたら、ほとんど何もしなくても緑の山に育ち、本来の植生の山が蘇りました。今や植物園と命名しています。

 大同市ではもう木を植える適当なところがなくなってしまい、2017年からは隣の河北省張家口市蔚県に拠点を移して活動を続けています。

 中国ではしばらく前から政府自体が緑化活動に熱心に取り組んでいます。しかし、何でもいいから植えるといった体で、ポプラやヤナギなど単一樹種ばかりが目立つところが多いです。中国は全体としてお金持ちになりました。しかし、緑化に関してはまだ知恵がない、技術に欠ける。これからはそういった面でのサポートが重点になると思われます。

 蔚県には、半乾燥地帯と言っても雨が降ると川が流れ、50平方㌔くらいの湿地があります。そこを国家級の湿地公園にしようという計画があります。どうしたらいいか。GENが知恵を求められ、去年から専門家を派遣し調査に乗り出しています。この月には地盤と野鳥のエキスパートが出かけ、野鳥に関してはこの時期75種類を確認しました。私もくっついて行って探鳥を楽しみました。写真はヤマショウビンと言うカワセミの仲間。美しかったです。(元社会部 藤田 修二)

 

 

蔚県で撮影したヤマショウビン