2019.05.08
閑・感・観~寄稿コーナー~
2012年に毎日新聞大阪開発社長を退任して以降、同年7月から神戸大学広報マネージャー、2015年からは追手門学院大学で教授職の傍らさまざまな裏方仕事をして、2018年からは副学長をしています。“毎日ワールド”から離れたこの7年間の結論。大学で働くのは極めて面白い。日々改革を続ける追手門に身をおいて刺激的な暮らしをおくっています。
追手門学院大学の所在地をご存知でしょうか。茨木市の山よりにキャンパスがあり、25分前後のバス通学で不便をかこっていました。今春、JR総持寺駅(昨年開業の新駅)から徒歩十数分の東芝工場跡地に新キャンパスがオープン。全学部の1年生と地域創造学部、国際教養学部の2~4年生が通っています。逆三角錐5階建ての大学棟は巨大タンカーのへさきに似て、迫力十分。1階はホールと4つの多目的スタジオ、2~5階は教室で、5階中央は陽光を受ける広場になっています。付属の中高も同じ敷地に同居しています。新キャンパスの課題は通学路の整備が十分でないこと。歩道が狭かったり、一部はなかったり。職員やアルバイトが出て交通整理に当たっていますが、私もリスク管理を担当していることもあって朝の通学をしょっちゅうのぞきに行っては対策を進言しています。
今の本務は総務領域の副学長。70歳を過ぎましたので教授職は終了。昨年までは日本語表現の授業を担当して、学生諸君に作文を課しては戻ってきた作文に真っ赤に朱を入れ、暗誦や新聞記事の要約をさせて文章力をつけていました。しんどいけれども手ごたえのあった授業を担当できないのは残念です。その代わりにライティングセンターの先生は続けていますので、学生チューターと一緒にレポートの書き方が分からない学生の相談に応じています。
副学長の仕事は多様ですが、大学の方向性を決める会議に参加して自分の意見を反映させることができるのが醍醐味です。10年後には18歳人口が半減するといわれます。その中で追手門が生き残るためにどのような大学に自己変革していくか。どのような学生を世に送り出すか。そのためにどのような教育理念、体制を築き上げていくのか。国の高等教育改革方針に先んじての熱い議論が毎週月曜の学長会議で繰り広げられ、それが学部会議への諮問となり、戻ってきた意見を踏まえての政策実行となります。追手門はカバナンス改革からスタートしましたので、理事長学長の権力は絶大。改革のテンポは国立大学とは比べ物にならないほど早いのです。
昨年までは学生領域担当でしたので、その当時の実例で説明すると分かりやすいでしょう。追手門の学友会は学長がトップで、学生を教職員が全面サポートします。たぶん全国でも珍しい形態です。2016年12月にそれまでの学友会を廃止して新学友会追風が誕生しました。それまではクラブ学生の代表で構成されていましたが、クラス(ゼミ)代表が加わることで全学生の意見が反映される組織に衣替えしました。昨年の大学祭では近隣の大学に呼びかけて学生サミットを開くなど、活動は緒についていますが、内容が追いついていません。「追風の使命は社会貢献にある」と発破をかけているところです。学生領域担当では不祥事の後始末もやりました。昨年、学生2人が大麻取締法違反で逮捕された事件では記者会見にも臨み、頭を下げる私の姿をテレビで見た孫が「じーじ、じーじ」と叫んでいたそうです。それ以外にもスクールバスの委託先を変更したり、クラブ活動支援センターを立ち上げたり。
忙しさは担当が替わっても同じこと。オープンキャンパス、入試などは全て立会いが必要ですし、校友会、教育後援会の行事にも参加します。土日がつぶれるので、連れ合いには我慢させています。ま、副学長が終わる来年春以降は海外旅行に連れ出すことで勘弁してもらいましょう。(豊島 眞介)