2025.02.03
先輩後輩
学校法人山野学苑の広報担当顧問をしていた当時、2018年6月1日付毎日新聞に、山野学苑の全面広告(写真①)を出稿した。この日は84回目の山野学苑創立記念日だった。左上の写真は、山野愛子さんの真剣な表情が創立記念日にふさわしいと考え、大きく掲載した。
それから6年後の2024年10月20日、毎日新聞の「みんなの広場日曜版」のテーマ「新聞へ」に、美容師・小林樹代子さんの投稿が掲載された(写真②)。何と写真①のモデルだったというのだ。
そこで、小林さんと連絡をとろうと考え、投稿担当者に住所問いあわせのメールをしたところ、「みんなの広場日曜版」は大阪本社制作で、編集担当は社会部の斉藤貞三郎さん。「投稿者の住所は個人情報なので提供できない。投稿者宛に手紙などを送りたいのであれば、開封したまま送料とともに担当者に送付して欲しい。内容を見させていただき問題なければ当方から送付する」とのメールをいただいた。
そのむね山野学苑担当者に伝え、斉藤さんを通じて手紙と記念品を届けてもらったところ、小林さんから丁重なお礼の手紙が山野学苑に届いた。これで調布市にいる小林さんとの接点ができた。
10月24日、山野学苑の担当者2人と一緒に、小林さんの三鷹市にある美容室を訪問した(写真③)。瀟洒なたたずまいの美容室で一時間以上、美容への思いを語ってくれた。特に美容師に加えて、「毛髪診断士」の資格を得て、お客さまに毛髪管理の大切さを指導し、お客さまに合わせて調合したローションも提供しているとのこと。とても87歳には見えない迫力に圧倒された。訪問後、写真と合わせて斉藤さんに報告た。
新年になった2025年1月20日、斉藤さんから「皆が驚いた今回の一連の話を、27日付のシニア向けの話題を提供する朝刊家庭面(全国版)の『人100年クラブ』に掲載することが決まったので、16日に日帰りで小林さんを取材してきた」というメールが来た。こうして掲載されたのが、写真④だ。
記事の感想を斉藤さんにメールしたところ、「こちらこそうれしいご感想をいただき励みになります。『みんなの広場日曜版』は毎週テーマを決め、投稿を全て読み、掲載予定者に電話、添削、ゲラ確認まで1人で担当していますので、それなりの負担感はありますが、投稿者の『祖父の代から毎日一筋』『結婚してから50年来の毎日ファンです」という言葉に支えられています。本当にありがたいことです」との返信をいただいた。
その前に、斉藤さんから届いたメールには以下のように記されている。
東京・八王子で生まれ育ち、1987(昭和62)年入社。手書きの原稿、フィルム式のカメラ、支局で写真現像、本社へ電送していた時代を知る今では数少ない「昭和の記者」。主に大阪本社管内で社会部、地方部、学芸部長、編集局次長などを務め、2021年7月から「みんなの広場日曜版」を担当。2024年2月に定年退職し、再任用(キャリアスタッフ)で働いている。
(毎日新聞社の)経営危機当時の混乱や苦労は、若い頃に上司からよく聞いた。入社時は新旧合併も果たし、バブル経済に突入する時期だったので、人事部長には「今まで大変だったが、あと10年たったら君らの給料も他社並みや!」と景気のいい話ばかり聞かされたものだ。結局、一度も他社並みにはなることがないまま定年となった。とはいえ、「日本で最も歴史ある新聞」の一員として今もこうして仕事を続けていられるのは、最大の危機にあった当時の先輩方のご苦労、ご尽力、そして読者の支えがあったからこそと、感謝にたえない。
毎日新聞のみならず業界全体が大変厳しい時代を迎えている。紙は減り続け、デジタルの収益も上がらないという状況だが、命を懸けて会社を守り抜いた先輩方に恥じることのないよう、これからも報道機関として役割を果たし、若い世代が希望を持って仕事ができる会社であり続けるため、微力ながら力を尽くしていく。
斉藤さんの思いがこもっているメールだ。斉藤さん担当の「みんなの広場日曜版」が楽しみになってきた。
(福島 清)
=東京毎友会のホームページから2025年1月30日
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