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新刊紹介 横山裕道著『宇宙から見る気候危機  地球外知的生命がいたら!?』=東京毎友会のHPから

2025.01.07

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「宇宙から見る気象危機」

 紫峰出版のHPから――。まず本の表紙に注目を……。宇宙船に乗ってどこか遠くの惑星からやって来た知的生命が地球をのぞき込んでいる。「何だか地球がおかしいぞ」と心配しているようだ。人類以上に文明を発展させた宇宙人なら、地球が置かれた状況をしっかり把握している可能性がある。こんなイメージを最初に持ってほしい。

 国連のグテレス事務総長が「気候崩壊」「地球沸騰化の時代」という表現を使ったように、地球温暖化による気候危機は深刻な状況になっている。このままでは世界各地で熱波や干ばつ、洪水などの異常気象、自然災害が多発し、食料や水不足から難民が急増するだろう。だが各国の温暖化対策は遅々として進まない。

 おまけに地球上では戦争や紛争が絶えず、核戦争の脅威もある。新型コロナウイルスが途上国や貧困層を直撃したが、もっと強烈な感染症が我々を襲ってもおかしくない。「人間の未来はいったいどうなるのか」と心配になってくる。

 宇宙の片隅の地球に生命が誕生し、進化を繰り返して知的生命の人類が登場した。その人類はずっと宇宙に憧れてきた。そもそも生命のもとは宇宙からもたらされた可能性がある。巨大隕石の落下が人類誕生のきっかけになるなど、我々と宇宙の関係は深い。地球の環境が一層ひどくなれば、人類の宇宙移住も現実味を帯びる。「宇宙は人間出現を意図していた」という人間原理の考え方もある。

 そこで宇宙の視点から、地球上の人類が化石燃料の大量使用による未曾有の気候危機を招いたことを振り返ってみることは、地球温暖化への理解を深め、解決策を見いだすために有意義ではないか――。こう考えて本書をまとめた。全体を通じて「我々と宇宙のつながり」「かけがえのない生命と宇宙」といった点を絶えず意識し、多角的に気候危機の問題を浮き彫りにしようとした。

 特に宇宙のどこかに存在する「知性」との接触を目指した地球外知的生命探査(SETI)にはたびたびスポットを当てた。もう一つの知的生命が人間以上の文明を発展させ、既にエネルギー・環境問題を克服している可能性がある。彼らとコミュニケーションできれば、気候危機を乗り切る重大なヒントを聞けるかも知れない。

 序章には<架空ドキュメント「宇宙人の存在を確認」>を置き、2040年の世界にタイムスリップした。夏の熱波は耐えられないほどのものになり、強暴化した台風が各地を襲う中で、中国が「地球外知的生命からの電波を検出した」と発表、世界は興奮の渦に包まれた……。迫力のあるドキュメントになっていると思う。

 その上で、〈「第2の地球」も異常事態体験か〉〈熱心に続く地球外知的生命探査〉〈地球上に出現した我ら知的生命〉〈科学技術がここまで進んでも〉〈人類の宇宙移住はあるのか〉〈人間出現を宇宙は意図していた!〉〈我々の未来はどうなるのか〉の7章構成にした。7章の最後に、もし地球外知的生命と交信が成功した場合、またとないチャンスととらえ、「あなた方の知恵をお借りしたい」と呼びかけるだろうという話にした。

 広大な宇宙と、我が地球に迫る気候危機のナラティブ(物語)にぜひ目を通していただきたい。

 ダウンロード版(A5版 170㌻)500円+税  ISBN:9784907625696

 印刷版(POD)(A5版 170㌻)2,100円+税 ISBN:9784907625702

 横山裕道さん(80歳)は、東大大学院理学系研究科修士課程修了。69年入社、科学環境部長、論説委員などを歴任。元淑徳大学教授。環境省「国内における毒ガス弾等に関する総合調査検討会」検討員、日本環境学会、認定NPO法人気候ネットワーク、認定NPO法人環境文明21、日本科学技術ジャーナリスト会議各会員。

 著書に『次の大地震大研究 地震記者は訴える』(光人社)『遺伝子のしくみと不思議』(日本文芸社)『地球温暖化と気候変動』(七つ森書館)『3.11学 地震と原発そして温暖化』(古今書院)『いま地震予知を問う 迫る南海トラフ巨大地震』(化学同人)『気候の暴走 地球温暖化が招く過酷な未来』(花伝社)『原発と地球温暖化 「原子力は不可欠」の幻想』(紫峰出版)、『さまよえる地震予知 追い続けた記者の証言』(同)、『徹底検証!福島原発事故 何が問題だったのか』(化学同人、共著)など。

=東京毎友会のホームページから2025年1月6日

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https://www.maiyukai.com/book/20250106