2020.08.30
先輩後輩
映画「アラビアのロレンス」に憧れ197年、シリアに向かった岡本秀樹。空手の稽古を通じて、アラブ民族に自立への誇りと現地の活気をもたらしていく。稽古を通じ築いた政官中枢との人脈を生かしエジプト、イラクでビジネスに挑むが、国際情勢に翻弄され計画は暗礁に乗り上げる。すべてを失った男が、たどり着いた場所とは——。 これは出版社のHPにある紹介だが、9月6日付産経新聞に作家の黒木亮氏が書評を書いている。
《本書は、アラブ現代史でもある。ぞくりとさせられるのは、岡本がベイルートの道場で、パレスチナの秘密武装組織「ブラック・セプテンバー」の最高幹部、アリ・ハッサン・サラメに稽古をつける場面だ。道場に入る前は必ず部下たちが検分し、サラメや一緒に指導を受ける若者たちが周囲に置くタオルを、ある時めくると、拳銃が現れる。72年の初夏、サラメは「しばらく稽古を休む。元気でいてください」と告げ、間もなく彼らはミュンヘン五輪の選手村でイスラエル人選手ら11人を殺害。7年後、サラメはイスラエルの対外特務機関「モサド」の報復で爆殺された》
《本書は、女癖の悪さや悲喜こもごもの愛憎劇など、岡本の裏の部分も容赦なく描く。しかし、そうした記述によって、読者はアラブ世界の現実を肌で思い知らされるのである》
《痛快で、強烈で、哀愁漂う一冊だ。読者は、岡本秀樹の人間像に驚きあきれながらも共感を覚え、一度会ってみたかったと思うのではないだろうか》
小倉氏は1988年入社。カイロ・ニューヨーク両支局長、欧州総局(ロンドン)長、外信部長、編集編成局次長を経て論説委員。2014年、日本人として初めて英国外国特派員協会賞受賞。『柔の恩人 「女子柔道の母」ラスティ・カノコギが夢見た世界』(小学館)で第18回小学館ノンフィクション大賞、第23回ミズノスポーツライター賞最優秀賞をダブル受賞。著書に『空から降ってきた男 アフリカ「奴隷社会」の悲劇』(新潮社)、『100年かけてやる仕事 中世ラテン語の辞書を編む』(プレジデント社)などがある。
角川書店刊、定価:2200円+税。 ISBN:9784041091609
=東京毎友会のホームページから(2020年9月7日
(東京毎友会→新刊紹介)
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